037 vs S級パーティー

 1時間後、訓練場にS級パーティー【サイクロプスバスターズ】がやって来た。ついでに野次馬も集まってきた。


「おいおい、俺たちを呼びつけるとはどういうことだ! くだらない理由だったら承知しねぇぞ!!」


「リーダーの言う通りだ。さっき仕事を終えてこれから一杯飲むところだったのによう」


 S級パーティーの面々が愚痴をこぼす。


「すまんのう。こちらも大事件が起きて仕方がなかったんじゃ」


「大事件だぁ? 何があったんだよ」



 ――ギルド長はこれまでの経緯を説明した。


「なるほど、俺たちはこの男と戦えばいいってわけだな?」


「そういうことじゃ。ただし、怪我をさせるんじゃないぞ。グローイン」


「鉄喰いを倒した男なら問題ねぇだろ。この閃光のグローインが相手でもよ。ただし、それが嘘ならどうなっても知らねぇけどな。さぁ、構えろ」


 グローインと呼ばれた男は訓練場の真ん中まで進むと剣を抜き構えた。


 さて、どうするかな? 今回はパイソンの能力を使わずに身体能力のみで戦ってみることにする。俺は魔剣テンペストブリンガーを構える。


「行くぞ!」


 グローインが一足飛びで懐に飛び込んできた。だが、あまりにも遅い動きに思える。手を抜かれているのだろうか?


「遅いな」


 俺はグローインの剣を紙一重で避けると魔剣の柄の部分で腹を殴りつけた。


「ぐっふうううううううううう!!」


 グローインは後方に吹き飛び訓練場の壁を壊して更に吹き飛んでいった。


「「……」」


 それを見たS級パーティーの面々は口をポカーンと開けたままだった。俺も呆気なさ過ぎて正直驚いている。


「グローインが一撃で……」


「マジかよ……」


 野次馬たちは驚いているようだ。


「しょ、勝負あり」


「ちょ、ちょっと待て! リーダーは腹の調子が悪かったんだ! 次はこの豪腕のアンドレが相手をしよう」


 ギルド長の合図で俺の勝ちが決定しそうだったのに、S級パーティーのメンバーが名乗りを上げた。


「まぁ、いいじゃろう」


「アンドレにはこの妖艶魔イレーネの支援魔法をかけさせてもらうわね! そうしないと本来の実力が出せないから!」


「さ、さすがにそれはまずいんじゃ……」


 ギルド長が止めようとしたが、S級パーティーは止まらない。


「攻撃力強化! 防御力強化! 反射神経強化! 準備オッケーよ!」


「うおおおおおお!! 力がみなぎるぜええええええ!!」


「仕方がない。開始じゃ!」


 ギルド長が合図を出すとアンドレが全力ダッシュでこちらへ向かってくる。重量感のある大男が走ってくると迫力が違うな。アンドレの両手には戦斧が握られている。


「強化してその程度か……」


 だが、俺の敵ではない。テンペストブリンガーで戦斧を迎え撃つと、戦斧は粉々になってしまった。


「なぜ俺の武器が粉々になっている!?」


 アンドレは柄だけになった戦斧を見て驚いている。


「武器の性能とステータスに差がありすぎるんだよな。悪いが早々に終わりにしよう」


「ぐああああああああぁぁぁ!!」


 鎧を叩くと鎧は粉々になった。その衝撃でアンドレもグローインと同様に吹き飛んでいった。


「今よ! 燃えつきろ! フレイムストーム!」


 背後から不意打ちで魔法を撃ってきたのは支援魔法をかけていたイレーネとかいう女だ。


「背後から不意打ちだなんて卑怯な女だな」


 だが、イレーネが撃った魔法は俺まで届かなかった。何故ならシールドが防いでいるからだ。


「保険でシールドをかけておいて良かった。パイソン、ファイアボール!」


 ドーン!!


「きゃあああああああぁぁぁぁ……」


 結果的に、S級パーティー全員と戦うはめになったが無傷で勝つことが出来た。俺も少しは強くなったのかもしれない。


「今度こそ勝負ありじゃ! 鉄喰いを倒したという話は本当だったのか!」


「鉄喰いを討伐してくれてありがとう。疑ってすまなかった。【サイクロプスバスターズ】も協力感謝するぞい。報酬の話をしたいので、ギルド長室に戻ることにしよう」


 俺とギルド長と受付嬢は再度ギルド長の部屋に移動することとなった。

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