心象風景

詩川貴彦

第1話 悲しい鉱山

「悲しい鉱山」


嵐の前の雲の谷間に

悲しい鉱山があった


黒い雲が

湿った風を呼び

錆びたトタン屋根が

寂しく泣いていた


タングステンの匂いと

うち捨てられたオブジェ

死に絶えたため池と

朽ち果てた機械達

錆びたレールは

もう歌を奏でない

赤銅のコンベアーに

もうモーター音は響かない

鉱夫たちの歓声は

二度と聞こえない


ああ

悲しい鉱山

時代に取り残され

こんなにも寂しい谷間で

たた

ひっそりと草に呑まれ

朽ち果てていくことしか許されないのか


嵐の前の風の谷間に

時代に消去された

悲しい

鉱山があった


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