007
彼女を送り届けた後、僕は徒歩で自宅へと帰った。
時刻は午後八時前。
「ただいま」
なんて言ってみた。
今、僕の自宅には誰もいない。
悪夢に
いや、ルーズというよりかは、僕に構っていられないほど
父さんは今年の春から大阪に転勤している。
そもそも、今年の春以前からずっと日本中どころか世界中の各地を転勤している。
今年の春休みだって三日しかいなかった。
つまりは、僕の養育は母さんだけ、ということになるのだが、この母親もまた、一日中働いている。
今日の朝だって、テーブルの上にラップの掛ったサラダと目玉焼きとパンを置いて既に出勤していた。
そして、今。午後八時のこの時間、テーブルの上にはラップの掛った煮っ転がしと茶碗とお椀が置いてある。
いつも通り、母親は夕方に帰ってきて、夕飯を用意して夜勤に出かけて行ったらしい。
全く、よく働く。そして、ちゃんとご飯を作ってくれる。本当にいい母親だ。
いつも通り、夕飯を電子レンジで温め、母親に感謝しながら箸を進めた。
生活をしながら、今日の久美の事について思い出してみる。
最後のあの無表情は絶対怒っていた。いや、怒りを通り越して感情が表れてなかったような。これは、完全にやらかしてしまったのか? 正直言うと、今さらメールかなんかで連絡を取ろうとも思わない。なんか、自分のしたことについてご機嫌取りをしている風にも感じられてしまう。僕の場合はそう思う。だから今夜は
というか、今日の彼女の最後の無表情は、私に関わってくれるな、と言いたげな人間のする、どこか自衛意識の高い表情に見えた。
そんな気がした。
もしかして、僕は嫌われてしまった?
確かに、キスは急ぎ過ぎたかも知れない。
けれども、高一からの付き合いじゃないか!
交際始めてからもう三ヶ月の付き合いじゃないか!
正直言って、今すぐ彼女に確認が取りたい。けど、
なんて、僕は思春期の青年によくある悩みで夜も中々寝付けなかった。
明日知ることになる世界の真実を聞いた後にその時を振り返ってみれば、
それは、幸せな時間だった。
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