いきなりバレてるじゃん!

【魔大陸】

人間達が、住む大きな大陸から海を挟んで少し離れており、常に日の射さない暗雲が立ち込める瘴気が充満している大陸であり、魔族や魔物の最後の楽園となっていた。


「魔王バアル様!大変でございます!」


魔王の間に、王妃に付いていたメイドが慌てて入ってきた。


「何事だ!まさか、子供か我が妻に何かあったのか!?」

「御子様は無事に産まれました。女の子でございます。王妃様も無事にございます。それより、御部屋へお急ぎ下さい!」


魔王バアルは首を傾げた。無事に子供が産まれ、母子共に無事なのに何を慌てているのだろうか?

しかし、自分の子供が無事に産まれた事もあり急ぎ部屋に向かった。


「フレイアよ、大義であった!」


部屋に入ると魔王バアルは妻を労った。


「はい、ありがとうございます。それより大変な事になりましたわ」


子を産んだばかりで、体調が悪そうな妻にバアルは尋ねた。


「疲れている所すまぬな。いったいどうしたというのだ?無事に産まれたのであろう?」


「子供を見て下さい」


妻のフレイアは一言そういった。バアルは産まれたばかりの子供を見ると目を大きく開いて驚愕した。


「ば、バカな!?魔族である子供に『女神の加護』があるだと!?」


産まれたばかりの子供の『手の甲』に女神の紋章が浮かんでいた。そして、魔王の能力である魔眼には鑑定のような能力があり、自分の子供に『女神の加護』がある事がわかったのだ。


「我が娘は途方もない運命を背負って産まれてきたのか………」

「そうかも知れませんね。私達の娘が傲慢な人間達に裁きを下すために、産まれてきたのかも知れません」


両親の会話を私はしっかりと聞いていた。


『女神様~!いきなりバレてるじゃないですか!?しかもヤバくない?これから人間を殺す為に教育させられたらどうしよう………』


まだ産まれたばかりで、ろくに動けない私は両親の話を聞く事しかできないのであった。


「フレイアはゆっくりと休むといい。後は俺の方で対策をとってみる」

「はい、お願い致します」


フレイアはすぐに眠った。夫に子供の事を伝えたく耐えていたのだ。


「さて、この事を知っているのはお前達3人だけか?」


王妃の世話をする3人のメイドに声を掛けた。魔王の王妃に仕えるだけあって、それなりに強力な魔族であり、主を裏切らない契約を結んでいる者達であった。


「はっ!そうであります」

「よし、我が妻の出産を手伝い感謝する。我が子の女神の加護の事は他言無用だ。わかっているな?」


深くお辞儀をしてメイド達は答えた。


「心得ております。ただ魔王様の御子様の事は魔大陸に住む魔族達が大変興味を御持ちです。すでに斥候も放たれているようですが、大丈夫でしょうか?」

「うむ、もっともな事だな。我に怨みのある者が、あわよくば我が子を殺そうと動くであろう。対策はしているが─」


そう、対策はしている。大悪魔である旧友に手を貸してもらう事になってはいるが…………女神の加護の事を知れば、どう動くかわからないのだ。


魔王バアルは少し考える素振りをしたが、メイド達には対策してあると言って、部屋を後にした。





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