アメリカン
「いつきたの」
「さっき。わからなかった」
「どこからきたの」
「向こうから。ワゴンころがしながらおじさんが持ってきた」
女の子はそう言って、ぼくが見ていた方向と逆の方向を指さした。
「おじさんなの。さっきのおばさんじゃなくて」
「おじさんだよ。ヒゲをはやして、ぼうしをかぶった」
「カウボーイハット」
「うん。そうかな」
トレーにのったハンバーガーはやけに大きかった。
コーラもポテトもビッグサイズだ。
「アメリカンサイズだね。あたしの分も食べてね。
多分食べきれないから」
女の子はそう言って、
ハンバーガーのはしをちぎって食べはじめた。
さっきパン食べたしね。
コーラのカップを持つと女の子の顔は半分かくれてしまう。
女の子はやっとの思いで、ストローからコーラを一口すする。
「どこか泊まれるところあるかな」
「そうだね」
「でも、もうすぐ町だから大丈夫だよ」
「そうかな」かすかに残るぼくの不安。
おばさんがサービスと言ってコーヒーを持ってきてくれた。
ぼくはタバコに火をつけた。
女の子が煙の先を目で追っている。
ぼくはタバコを片手にコーヒーをすする。
たしかにサイズはでかかったけれどまずくはなかった。
このコーヒーもそこそこうまい。
「ねえ、あたしにもちょうだい」
女の子がぼくに言った。
でも、ちょうだいって何を。
コーヒーはふたつきてるし。
女の子は僕の指先をじっと見ている。
「吸うの」
ぼくがそうきくと、女の子はこっくりとうなずいた。
女の子はぼくがテーブルの上に置いたタバコの箱から、
うれしそうにタバコを一本取り出して、
「火はあるの」と言って自分のリュックの中をさぐっている。
リュックから取り出したライターでタバコに火をつけると、
女の子は気持ちよさそうに天井に向かって煙をはき出した。
「この辺にホテルありますか」
レジを済ませてから、ぼくがおばさんにきいた。
「ありますよ。ちょっと行ったところに」
「近くですか」
「すぐ近く」おばさんはにこやかに笑っている。
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