第11話 死の森の先に・・

 これから自分がどうなってしまうのか不安にかられながら、暗い森の中を葵はカーリー・スーと一緒に歩いていた。死の森はやはり、生命が生きている気配すらを全く感じない。森全体が完全に死んでいた。そんな雰囲気の中に、一人明るく話を続けるカーリー・スーの呑気な話し声だけが響く。

 と、その時だった。突然、目の前の森が開けた。

「あっ」

 そこは、明るく日の光が差し込み、緑が青々として、輝く美しい森の姿があった。

「こんなところが・・」

 葵は戸惑って、辺りをキョロキョロと見回した。

「死の森・・、よね・・」

 死の森から抜け出た感覚はなかった。カーリー・スーとは、それほど長い距離を歩いたわけではない。

「あっ」

 ふと見ると、その開けた空間の真ん中に、カーリー・スーの服装のような、ど派手で珍妙な形の家がその森に全くふさわしくない形で建っていた。ドアも窓もすべて傾き、屋根や柱はくにゃくにゃと曲がっていた。しかし、それでいて、なぜか、どこか平行が保たれ、家としての体はなっていた。

「あれがあたしたちの家だ」

 カーリー・スーが言った。

「ここは・・」

「ここは死の森の中心だよ」

「死の森の中心?」

 死の森の中心にこんなところがあったなんて・・。葵は、周囲を見回す。そこは燦燦と日が降り注ぎ、小鳥たちがさえずっている。そこには生き物の鼓動と、森の持つ清々しさがあった。

「スーねえちゃん」

 その時、突然その家のドアが勢いよく開き、その中からワラワラと色とりどりの服を着た小さな子供たちが勢いよく出て来た。そして、すぐに二人の周りを取り囲む。

「どこ行ってたのぉ~。スーねえちゃん」

「ちょっとな」

 カーリー・スーが、まとわりついて来る子どもたちの頭をなでながら答える。

「・・・」

 なぜ、死の森にこんなにたくさんの子供たちがいるの?それにあんな小さな家にこんなにたくさんの子どもたちがいるなんて・・。葵はさらに驚く。

「スーねえちゃん、この人誰?」

 オレンジ色の服を着たまん丸な顔をした女の子が、葵を指差す。

「新しい仲間さ」

「仲間?」

 その答えに、葵はまた驚く。葵は自分が置かれている状況が全く分からなかった。

「さっ、カリカチュア様のところに行こう」

 カーリー・スーが葵を見て言った。

「カリカチュア様?」

「うん、私のお師匠様。世界一の魔女さ」

「魔女・・」

 魔女の恐ろしさは、小さい時から村の人からたくさん聞いていた。カーリー・スーはなんとなく悪い子ではないと感じてはいたが、しかし、葵は、魔女と聞いて不安を感じた。

「さあ、行こう」

「う、うん・・」

 しかし、カーリー・スーは、さっさと歩き出す。葵は、躊躇しながら、でも、どうすることもできずカーリー・スーの後ろをついて行った。

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