For lust

夜の帳が、欠けた月を闇へと隠す・・それは人の弱さを深く隠すように

無表情な静けさが、帳を深くする・・見えない悪夢がそこにはあった


夜は悲しみすらも、黒く覆い隠してしまう。その悲鳴も、誰の耳にも届かなかった

ただ、ドス黒く重い影が、じっとその場を支配していた・・。


冷たい木々の片隅で、嗚咽を絞り出す誰か・・。耳を塞ぎたくなる現実

癒えない傷が、誰かを抉っていた。


その誰かは、まだ誰も知るよしも無い


程なくして、木々が一本増えていた・・それはギッ・・ギッと不愉快な音を鳴らして

風に靡(なび)く汚れたロープが、振り子の様にゆっくりと闇の中泳いでいた。



闇の中で、死んだ魚の様な、かつては光を灯していたその娘の目眼(まなこ)に

流されなかった血の涙が、どこか深いところに助けを求めたかの様に落ちていった・・


少女は全てが嘘になる事を願いながらも、

残酷な朝がその個体をあてもなく揺らし続けていた

月日は経つ



月日は経つ



時は残酷に経つ



現実は風化する


悲しみも隠されたのだ


真実も薄汚れた


誰もいない


誰もいなかった


誰も気付くものすらなかった


ただそこには、少女を救うはずだった光が骸を照らし、夜の帳が隠し続けるだけだった。

               ダ レ カ

             タ  ス  ケ  テ 

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