第51話 掌返し

「あらら、エミーシャ様ほどの方が食料を取れなかったんですか?あー、美味い美味い!」


 ホムラに対してご飯を分けて欲しいと土下座するエミーシャにとりあえず煽っておくホムラ。


「ぐ……取れなかったわよ!」


 悔しそうな表情のエミーシャ。最初の自信はどこに行ってしまったのか。ここでご飯を分けないほどホムラは鬼畜ではない。


「仕方がないですね。どうぞ、分けてあげますよ」


 とホムラが言うのだった。




「美味しいわぁ〜、こんなに美味しいご飯食べたことがないわぁ〜」


 ほんわかした様子でご飯を食べるエミーシャを見ながらホムラは、食材調達を思い出すのだった。




「よぉーし、食材採取だ!」


 取れなければご飯は抜きだ。全力で取り掛からねばなるまい。夕飯は何を食べようかな?と考えながら森を歩き始める。


 お肉は是非とも抜かせないので、ゲットしたいと思う。


「お、鳥の魔物」


 森の奥で木に止まっている鳥型の魔物を見つけた。父様が前に結構美味いと言っていたので、狩りたいと思う。


 とりあえず、神器の実験も行おうと考え松明を取り出す。


松明形状変化:スナイパーライフル


 松明の形状がゲームなんかでも目にする銃に変形する。距離もあるので魔物はこちらに気づいてない様に思われる。


 ホムラはスコープを覗いて狙いを定めて引き金を引く。ある程度の狙撃の補正が付いている様で、ゲーム感覚で使うことが出来た。


 銃撃音が森に響き、魔物は頭を貫かれ訳もわからず命を刈り取られる。


「よし、ナイスショット!まあ、武器のお陰だな……」


 距離によって弾が落ちることなども余り考えずにスコープ通りに撃ったらしっかり当たった。武器を作ってくれた方、感謝です。


 武器を与えた私には感謝はしないのか?と変態な元神が言ってきそうだが、泥棒には感謝しません。




「おー、なんか音がすると思ったらお前かーホムラ。あっさり仕留めたな」


 アイテムボックスに仕留めた鳥型の魔物をしまっていると、師匠がやってくる。スナイパーライフルの音が聞こえたようだ。


「あ、自分でご飯を取れとかいう鬼畜の師匠じゃないですか。どうもお久しぶりです」


「鬼畜とは言うじゃないか。余裕で食料調達出来るお前にはさらに厳しくしても良いんだぞ?」


 この師匠はなかなかに鬼だ。


「それは是非、勘弁してもらえたら」


「私は、エルメティアせんせーみたいに優しくないぞ?さてさて、どうしたものかなぁ?」


 不気味な笑みを浮かべてくる。この人はなかなかに性格が悪い気がした。実力があるだけにタチが悪い。


「もしかして、何か要求でも?」


 何か求めているようなので、聞いてみることにする。


「いやー、携帯食料とか買うの忘れてたから、今夜のご飯分けて!」


「おい!」


 この師匠はダメかもしれない。弟子にサバイバルさせておいて、ご飯をねだってきやがった。土下座でもすれば分けてもらえるとか言ってたのに。


「その分、良い稽古つけてやるからさー!」


「いや、それって対価なんですかね?」


 彼方に条件が良すぎる気がする。全く舐められたものだ。


土下座しやがれ!



「ならば、エミーシャが水浴びをする際に私が見張りをしているのだが手を抜こう!」


「師匠、今日のおかずは何品に致しましょうか?」


 即答、そして土下座である。我ながら見事な掌返し。師匠、ずっとついて行きます!これは食材探しにも気合が入るというものだ。


「君の判断に任せよう。沢山作ってくれることを期待しているぞ?」


「任せてください!」


 と2人は握手する。



 これは成功させなければなるまいとホムラは思うのだった。

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