第5話

あなたは、眠るとき、ママにがっちりとしがみついていないと駄目な子だった。


「ママは誰にも渡さないぞ」って感じでね。


おかげで、ママの首には、いつもあなたの引っ掻いた後の傷がついてた。


甘えん坊さんのあなたは、目が覚めた時に、そばに誰もいないと、必ず泣いた。


いつも、温もりを求めてたね。パパも同じことを求めていたから、


パパは、ずーとあなたを抱っこしてくれてたのよ。二人とも臆病ね。


あなたは、かなり早い段階で「こわい」って言葉を覚えて、しょっちゅう使ってた。


ショベルカーを見たら、「こわい」


救急車の音を聞いたら、「こわい」


ワンちゃんを見ても、「こわい」


挙げ句の果てには、飼い猫のお姉さんを見ても、「こわい」って。

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