第7話(1)

「「「「「ようこそ英雄様っっ!!」」」」」


 次の日の、約束した時間。この国における政治の中心地である『ヴァンアス城』に着いた私達は、豪華絢爛な廊下を歩いていました。

 あの宰相閣下が王の間まで案内してくださっていて、廊下の左右には衛兵さん達がずらっと整列している。それらによって改めて、マティアス君が英雄なのだと――高い影響力を持つ人なのだと、認識させられました。


「「「世界を救ってくださり、ありがとうございますっ!!」」」

「「「貴方様のおかげで平和になりました……!! このご恩は一生忘れません……!!」」」

「皆様。ここにいる男は、私利私欲で動いただけです。ですのでそういうものは、結構ですよ。俺には、そういった言葉を受け取る資格はありませんので」

「「「「「いえっ! ご事情がどうであれ、マティアス様が救世主である事は事実ですっ! 一生涯お慕い申します……!!」」」」」


 マティアス君が首を振るとその何倍もの大きな首振りが帰ってきて、城内は更に大盛り上がり。英雄様コールを受けながら私達は赤いカーペットの上を進み、一際大きく豪奢な扉の前に着きました。


「マティアス様、マーフェル様。どうぞお入りくださいませ」

「宰相閣下。直々のご案内、痛みいります」


 私達は丁寧なお辞儀にお辞儀を返し、オルジー様によって開けられた扉を潜ります。そうすれば廊下以上に絢爛な空間が広がっていて、その最奥に豊かな髭を蓄えた男性がいらっしゃいました。

 あの方は、ルシアン・ファブ様。この国の長であらせられる、国王陛下です。


「おおマティアス殿、よく来てくれた。イリス・マーフェルもな」


 玉座から立ち上がった陛下は顔を綻ばせてマティアス君に歩み寄り、2人は握手。私はカーテ・シーを行い陛下は大きく頷かれ、私達は中央に特設されていたテーブル――紅茶が用意された場所へと導かれ、まずはそこで少しお話をする事になりました。

 今いるのは王城で、お傍にいらっしゃる方は国のトップ。信じられない状況なのですが、傍にはマティアス君がいてくれますし、昨夜の言葉があります。そのため緊張はあるものの不安はなく、平静を保てています。


「今日の為に、最高級の茶葉を用意したのだよ。お味は如何かな?」

「美味しいですよ。ね、イリス」

「はい。深みと程よい酸味が広がって、美味しいです」


 揃って出された紅茶を味わい、陛下とマティアス君は一昨日のパレードの事などを語り合います。そして5~6分ほどするとそのお話が終わり、国王陛下の瞳が私に向きました。


「部下から聞いたぞ。マティアス殿は彼女の為に魔王討伐を行い、今では同じ家で暮らしているそうだな?」

「ええ、そうですね。先日有難い事に、この気持ちを受け入れてもらえましたので。生涯あの場所で、彼女と過ごします」

「ふむ、そうか。…………その件、なのだがな」


 それを聞いて、トーンが少し下がります。そしてその状態で眉間に少しばかりの皺を刻んで――陛下はやや不満げなご様子で、おもわず目が点になってしまう事を仰ったのでした。


「マティアス殿。その交際を、考え直す気はないかな?」

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