おばけのお菓子

メリーさんはお化け羊の夢を見るか?

 本日のお当番は、真っ白な長い毛並みが美しいメリーさん。

 お菓子は—— 。


 プルルル、プルルル。


 あっ、電話だ。

 はい、もしもし、猫のお菓子屋さんです。


「あたし、メリー」


 えっ、メリーさん? 今日はお当番の日ですよ、どこにいるんですか。

 

「今、猫のお菓子屋さんの前にいるの」


 それなら、さっさと入ってきてくださいよ、なんでわざわざ電話してくるんですか? 


 プツン、ツーツー。


 あれ? 切れちゃったよ。


 プルルル、プルルル。


 また電話だ。

 はい、猫のお菓子屋さんです。


「あたし、メリー」


 だから、メリーさん、電話なんかしてこないで、早く入って来なさいったら!


「今、猫のお菓子屋さんの中にいるの」


 えっ? お菓子屋さんの中って、いつ入って来たんです?

 えっ? えっ? どこどこ? どこにも、いないじゃないですか。それとも隠れているんですか?

 隠れているんなら、さっさと出て来てください、今日のお当番なんだから。


 プツン、ツーツー。


 また、切れちゃったよ。

 お——い、メリーさん、隠れていないで出てきなさぁ————い。

 かくれんぼして遊んでる場合じゃありませんよぉ〜。

 お当番は遊びじゃありませんよぉ〜、れっきとしたお仕事なんですよぉ〜。

 お客さん、来ちゃいますよぉ————。

 どこにいるんですかぁ——————。メリーさぁん、やぁ——い!

 ぐずぐずしてるとお菓子が化けて……。 


 プルルル、プルルル。


 やれやれまた電話か。

 もう、メリーさん、いい加減にしてください!

 なんで電話ばかりしてくるんですか!


「メリーさん? メリーさんって?……あの、そちらは猫のお菓子屋さん本店じゃないんですか」


 えっ? あれ? メリーさんじゃない? し、失礼しました。そうです、はい、猫のお菓子屋さん本店です。ご用件は、なんでしょうか?


「猫のお菓子屋さんで『お化けのお菓子』特集をしているって聞いたんですけど」


 はい、そうです。よくご存知で。


「……それで、メリーさんなんですか?」


 今日のお当番の名前が、メリーさんなだけです。さっきから「店の前にいる」とか「店の中にいる」とか、電話ばかりしてきて困っているんですよ。


「それって、お当番の猫のメリーさんじゃなくて、都市伝説のメリーさんじゃないんですか?……きっと次は『あなたの後ろにいる』って電話が……」


 アハハ、まさか。電話かけているのは、今日のお当番の猫のメリーさんに間違いありませんよ。うちは猫のお菓子屋さんですからね。正真正銘猫の猫のメリーさんです、猫です、猫。人形なんかじゃありま…… 。


 プツン、ツーツー。


 ありゃ、キレちゃった。


 プルルル、プルルル。


 今のお客さんだな。きっと、電波の調子が悪かったんだ。

 はい、猫のお菓子屋さんでーす。


「あたし、メリー」


 えっ? メリーさん? お客さんじゃなくて?


「今、あなたの後ろにいるの」


 ゴクリ。

 ……えっと、この電話かけているのは、今日のお当番の猫のメリーさんですよね?


「あたし、メリー。今、あなたの後ろにいるの」


 ちょっと、メリーさん! なんで、そんなこと繰り返して言うんですか! さっきのお客さんが変なこと言うから、怖くて振り向けないじゃないですか!

 絶対に猫のメリーさんですよね? ねっ、ねっ? 後ろにいるメリーさんは、猫ですよね?……まさか、お人形とかじゃないですよね? 



 ペタン


 うわゎゎ、いきなり首に冷たいもの付けないでください!

 メリーさん、いたずらはいいかげんにして——

 ギャァァァァァァ!!!!



続く



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