ショートしちゃったいちごのショートケーキ

 皆さま、お忘れかと思いますが、開店当日、急遽きゅうきょお当番と日替わりお菓子が変更になった件について、これからご説明いたします。


 すべて、よけいなことばっかり考える水玉猫のせいだったんです。



 開店初日のお当番は作者ということもあり、多数決で水玉猫がお当番になりました。

 この日だけ、お当番決めはジャンケンポンじゃありませんでした。でも、今にして思えば、やっぱりジャンケンポンの方が良かったんです。


 ジャンケンポンなら初日そうそう、お当番も日替わりお菓子も変更なんて失態は起こらなかったはずですからね。



 通常はお当番さんが決めるお菓子も、初日はちがいました。

 事前に「猫のお菓子屋さんが開店したら、一番初めに食べたいお菓子」のアンケートをしていたのです。おとなりのパン屋さんのお客さんたちに、協力してもらったんですよ。

 そのアンケートを集計した結果、二位とのにゃん票差で、一位はいちごのショートケーキに決まりました。


 たぶん、オーナーのウサギさんのホイップクリームみたいに真っ白な顔とストロベリーみたいな赤い目が、お客さんたちに、いちごのショートケーキを連想させたからだと思います。


 いちごのケーキ大好きな水玉猫は、この結果に喜びました。いちごのショートケーキって、色からして紅白で、おめでたいじゃないですか。

 その上、毎月22日は、ショートケーキの日なんですよ。


 なぜ、ショートケーキの日が、22日なのか。


 カレンダーを見てください。一週間が縦に配列された七曜表しちようひょうのカレンダーでは、ほら、22日の真上に15日があるでしょ。

 15は、で、いちご。

 いちごがいつも上に乗っているから、22日がショートケーキの日になったんです。



 さらに、22日の22も、にゃん・にゃんで猫がらみ。

 日本の猫の日は、にゃん・にゃん・にゃんの2月22日ですから、2月はショートケーキの日と重なりもします。

 猫のお菓子屋さんの開店日のお菓子には、打って付け!!


 ここまでは、良かったんです。


 でも、この後、水玉猫は「いちごは、一期一会いちごいちえ」と、言わなくて良いことをつぶやいてしまったのです。いちごと一期いちごの単純な連想ですね。


 そうしたら、パン屋さんから「開店初日に、一期一会は、ないんじゃないの」と、ツッコミが入りました。

 なんせ、パン屋さんは耳の良いウサギさんですから、どんな呟きだって聞き逃しません。

「せっかく開店初日に来てくれたお客さんなのに、一期一会だったりしたら、そのお客さんは、もう二度とお菓子屋さんに来ないことになるよ」と、パン屋さんに言われちゃったんです。


 一期一会は、一生に一度の出会いという意味ですからね。そらくんの『空模様のマーブルケーキ』の一期一会の模様とは、根本からしてちがいます。


 猫のくせにチキンハートの水玉猫は、とたんに頭がショートしてしまいました。


 それを見たパン屋さんは、さらに厳しい追い打ちをかけます。

「頭がショートするようなショートケーキなんて、不良品だ。そんなもの、売り物にはならないよ」


 別に、パン屋さんに悪気があるわけじゃありません。パン屋さんは、あくまで、猫のお菓子屋さんの将来を案じてのこと。すべて親切心からでた忠告で、これっぽちも意地悪な気持ちはありません。モラハラなんかじゃないのです。


 それなのに、水玉猫ったらアワアワして、よけいにパニくるばかり。こんな水玉猫に、記念すべき開店初日を任せるわけにはいきません。


 猫のお菓子屋さんのモットーは「人生は短い、厄介ごとはスルーしよう」です。

 それで、お当番はすぐさま変更。


 ピンチヒッターに、三毛猫のミケちゃんが選ばれました。

 三毛猫といえば招き猫、三色だんごは「あきないおだんご」。

 おめでたい開店初日に、これ以上のピンチヒッターはありません。


 それで、お当番を降ろされた水玉猫はどうしたかというと、食パンの耳に悩みを長々と訴えていたようです。

 きつねこちゃんのように食パンの耳が、水玉猫の悩みを解決してくれたかどうかは不明ですが、まあね、おめでたい水玉猫のことですから言うだけ言ったら気が済んだみたいです。



 う、かんじんのアンケート一位のいちごのショートケーキのこと。

 皆さま、食べたいですよね。ご安心ください。

 近々、日を改めまして「ショートしない、いちごのショートケーキ」として販売することが決定いたしました!

 お当番は当然ながら水玉猫ではなく、しましま三毛猫のコミちゃんです。


 どうぞ、皆さま、とっておきの紅茶やコーヒーを用意して、コミちゃんがお当番の日をお待ちくださいませ!


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