第5話 失墜からの回想
「ん? 」
目を覚ますと、俺は拘束されていた。俺は一体どうなったんだ?
確か伯父と寿司屋に行って、昼食とっていて、………その後の記憶が無い。
眠った?いや、食事中眠気は無かった。となると、睡眠薬でも飲まされたか。
どこで? 寿司屋で飲んだものは……お茶!あの時か。記憶も丁度その時に消えている。
となると、店長の仕業か。伯父は何処にいるのだろうか?
一緒にいたので、別のどこかに拘束されているに違いない。
「ガチャッ」とドアが開く。その向こうには、さっきの店長と……伯父? 一瞬戸惑ったが、すぐに悟った。
ああ、はめられたんだと。俺の様子を見て、伯父が話しかける。
「よぉ目が覚めたか? 」
「ああ。スマホは…やっぱ取られてるか」
「お前の親嫌いは生粋のものだからな。おかげで口座も一緒に作れた。まぁ俺としても、阿多谷の親御さんがすんなり大金を渡すのは想定外だったわけだ。そう悪く思うな。」
「最初からこうするつもりだったのか? 」
「考えてもみろ。未成年者が大金の話しをちらつかせてくる。鴨がネギ所か、鍋まで持ってきてるようなもんだ。お前の考えはわからんでもないが、このご時世親元から離れるなんてそうそう出来ないぞ。他の理解ある血縁者がいなければ。その為に俺を頼りに来たんだろうが、面倒みきれん。たが、金は欲しい。そうなりゃやることは決まったもんだ。協力したふりをして、裏切るのは容易かったぜ。何せお前に選択肢は無かったんだからな。あ、拘束されているが、心配はしなくていい。五分後に連れの奴がほどいてやるからそれまで待ってな。後、失敗したついでに、教えてやる。阿多谷の時の慰謝料な。あれはふっかけすぎだ。金持ちだとか関係なく、障害が残って、やっと数千万円訴えられるかどうかだ。それじゃあ、何故引き受けたかって言うと、元々阿多谷の父親から許可はもらっていたからだ。何か、お前に興味があるんだと。それで、俺が裏切るのも見込んでいたらしい。わからない人だ。4000万円が予定だったのに、お前ときたら、5000万円に上げやがってヒヤヒヤしたぜ。小学生の時の協力していたときもギリギリだったんぞ。まぁこれに懲りたら、身の程に合った生き方をするんだな。じゃあな」
思えば、浅はかだった。伯父に頼る行為に何の保証なんて無いのに。契約書だったて、口裏合わせて誤魔化せば、立証は不可能だ。
5000万。本来なら手に入る筈だった大金。
振り込まれた当初は少なからずであるが、心が震え上がった。
何せ、独り暮らしをするという唯一の願いが現実的になったのだから。
だが、今はどうだ?絶頂からどん底で、ショックですぐに立ち直りそうにない。
伯父の言ってたであろう連れの者が拘束をほどいた。
やつあたりをしたいところだが、無気力な俺にそれは不可能だった。
そもそも、黙って殴られてくれるはずもない。
腕っぷしでもないのにふっかけるなんて、返り討ちになるのが落ち。
割りと冷静に、今置かれている状況を分析していた た。
いや、そうしないと、どうにかなりそうというのが本音だ。
ああ、俺の計画は白紙になってしまった。
またあの二人と過ごさないといけないのか。
ソ ン ナ ノ ハ ゴ メ ン ダ 。
慰謝料をふっかけすぎだ、ね。
途方に暮れていた俺はあるところに無意識に着いてしまった。
「ああ。ここからだったな」
そこは小学校だった。しかし俺が通っていた所ではない。
それでも充分すぎる程、嫌悪する場所である。
何の因果か、俺はこの行きたくもないここへと、たどり着いてしまったようだ。
そう気づくと、自嘲気味に笑っていた。
俺は向かいにある、公園のベンチに座り、あの時ことを思い出そうとする。
そうだ忘れない。忘れられない。忘れてなるものか。あの時から、俺の道は決まったんだ。
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