第33話 アルミダーラ
レイアの放った光の矢が、アルミダーラの瞳に命中しました。
「ぐわぁあああああああ!」
苦悶にアルミダーラは、その巨大な頭を後ろにのけぞらせた後、再び前に倒れ込んできます。
まさに、このタイミングを待っていたのですわ!
頭が低くなった瞬間、既に下で完璧な位置取りをしていたわたくしは、聖剣ハリアグリムを振りかぶっておりましたの。
「ソォオオオイ! デスのぉおおおお!」
わたくしは、天与が戦乙女かつ剣を使う場合にのみ使える戦技【ヴァルキリースラッシュ】を放ちました。
「ソイッ! ソイッ! ソイッ! ソイッ! ウラァァァァァア!」
さらに立て続けに【乙女の叫び】を放ちましたの。
アルミダーラのようなボスに対しては【乙女の叫び】自体は、効きません。しかし、この咆哮スキルを発動中は、使用者の攻撃力と戦技の効果が1.3倍になりますの。
「ソイッ! ソイッ! ソイッ! ソイッ! ウラァァァァァア!」
重ね掛けしても効果は重複しませんが、アルミダーラが頭を下げている内に、出来る限り体力を削っておくのですわ。
「ぐおおおおおぉおおおおお!」
攻撃を逃れようとアルミダーラが身じろぎする度に、わたくしは素早く位置調整して、【ヴァルキリースラッシュ】を叩き込み続けます。
とはいえ、いつまでもこの状態が続くわけではありません。スタミナが切れてしまう直前、わたくしは後方へと飛び下がりました。
攻撃が止んだ瞬間、防御に徹していたアルミダーラが、頭を上げようとしましたの。その瞳に輝きが集まり始めましたわ。ビームを放つつもりですの。
「今ですわレイア、任せましたわよ!」
「任されました!」
わたくしの背後では、レイアがエルフィンリュートを構えておりました。
その手には、まるで大木のように巨大な光の矢が形成されております。
わたくしがアルミダーラの注意を引き付けている間に、レイアはひたすら力をため込んでいたのですわ。
「サキュバスがチャールズを誘惑しようとするなら……わたしは光の矢にてそれを滅す」
レイアが呪文のようなものをつぶやくと、光の矢が大きくなりましたの。
「魔王が実は美少女でチャールズを篭絡しようとするなら……わたしは光の大矢でそれを滅す」
レイアが呪文のようなものをつぶやくと、光の矢がとてつもなく大きくなりましたの。
「この魔神がチャールズを害しようとするなら! わたしは魔神を滅す!」
巨大な光の矢が、アルミダーラの頭部に向かって放たれました。
ブゥンッ!
そしてアルミダーラの瞳から放たれるビームと、レイアの光の矢がぶつかり合い。
次の瞬間、
アルミダーラの頭部は消えてなくなっておりました。
ついでに、王城も玉座から後ろが全て消えてなくなっており、
その先には、それはもう見事な青空が広がっておりました。
「僕たちは勝ったの……か?」
最初に我を取り戻したのは、チャールズでした。
一方、レイアはと言えば、自分のエルフィンリュートを見つめながら、何かを考え込んでいるようでしたわ。
「ま、ままま、まさかこんなに凄い威力だなんて……。城まで吹き飛ばすつもりはなかったのです……」
「レイア! キミは、悪魔勇者を呼び出そうとしていた王……いや魔王を打ち払ったんだよ! 世界を救ったんだ! 何も気に病むことなどない!」
チャールズが、そう言ってレイアを励ましていましたわ。
「し、しかし、わたしはこの国の王を……」
「王ではなく、王に化けてこの国を乗っ取っていた悪魔ですわよ! あなたはこの国を救った英雄ですわ!」
「い、いや、それを言うなら、聖剣ハリアグリムで王を追い詰めたアレクサこそ……」
レイアが、わたくしにも責任を負わせようと話を振って来たので叩き潰しておきます。
「聖なるエルフィンリュートの巨大な光の矢が魔王を撃ち滅ぼしたのですわ! 聖樹にその身を捧げ、人々の安寧のために祈り続けてきた貴女だからこそ、天上界の神々もお力添えをくださったに違いありません。ねっ! チャールズ!」
「そ、そうだな。レイアのおかげだよ」
「悪魔と取引し国民を生贄に捧げていた邪悪な王を、清らかなる聖樹の乙女レイアが聖樹の加護を受けし聖なるエルフィンリュートをもて、撃ち滅ぼしたのですわ!」
この瞬間、わたくしは心を決めておりました。
レイアを英雄にして、この国の女王にスゲてしまおうと!
それで殲滅姫ローラとも握手させてしまうのですわ。
あっ、でも大事なことを忘れておりました。
「そういえばレイア、あなたはまだ乙女ということでよろしかったですの?」
そう言ってレイアとチャールズの交互に目をやりました。
「はっ!? 乙女に決まってるでしょぉおお!」
レイアが真っ赤になってわたくしに食って掛かってきましたわ。
わたくしはチャールズにジト目を向けて、
「このヘタレ……」
と呟いておきましたわ。
「えっ……いや……その……」
何か言い訳をしようとモゴモゴするチャールズと、真っ赤になったままのレイアに、
「ちょうどよかったですわ。レイア、乙女を卒業するのは女王の戴冠式の後にしてくださ……いま……し」
最後の言葉を言い終える前に、わたくし意識が遠のいていくのを感じましたわ。
「「アレクサ! アレクサ!」」
二人が必死に呼ぶ声が、わたくしの最後の記憶になりました。
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