王子ですが特に気にせず馬鹿してます。
極丸
第1話
悪役令嬢という言葉をご存じだろうか?
主にネット小説で使われるジャンルの一つであり、架空の物語上のキャラクター、立場上悪役のヒロインに主人公が憑依して自身の運命を変えていくというのが主なストーリーだ。最近は変わり種が出てきて主人公以外に転生した奴が居たり、実際の悪役が現世体験した後に元の物語に戻って現代知識チートで成り上がる、主人公以外が転生して主人公を探し出すとかいう初見じゃ訳が分からないレベルで設定が渋滞している物語もある。そんな中で俺は一つ疑問に思う事がある。
なぜ男側は何の変化も受けないのかという事だ。
元々女性受けを意識して出来上がったジャンル故仕方がない面もある。だって作り上げる時点で物語上の攻略対象などであることがザラであり、それ以外なら俗に男側の地位が墜落するシーン、俗にいう『断罪イベント』での落差を演出するためにヘイトキャラとして描かれる作品も多い。中には転生などを経て影響を受けるキャラもいるが、それはそのキャラ本来の姿とは言えず、その必死にヒロインを追いかける姿は滑稽そのものである。そういった姿を読みたいから作者も元の性格をなるべくクズに作ったり、主人公に一切振り向かない立場、性格、環境に男側を置くのだ。
つまり何が言いたいかと言うと…………
「ハナからロズリエさんラブの俺に死角はねぇって事だ!!」
「長々と何の話?」
現在、庭園内にて。コッテコテな中世ヨーロッパの庭園参考にして作りました!!と言わんばかりの造詣の庭園にて、俺はウチの従者のミジェロ・ケルドア相手に持論を熱弁していた。
「要するにだよミケ君?今後どんな主人公属性モリモリのTHE・可憐少女が出てこようと!俺が君のフィアンセを奪うつもりは微塵もないから安心してくれと言いたいわけだ!」
「すいませんモーリーさん紅茶お代わりできますか?…………あ、すいません途中から話聞いてませんでした。後何度も言いますけど俺はミケじゃなくてミジェロです」
「はー、事の重要さが分かってないねー君は?いいかい、あと数日もすれば君の目の前には女神と称させる様な可憐で母性をビンビンに刺激してくる少女が舞い降りる訳だよ?そんな彼女を手に入れる為には奥手な君は早々に勝負を仕掛ける必要があるんだ!!よーいドンなんて掛け声は恋愛において存在しない!ゴールを見据えた瞬間に一気に全速力で走らないとだめだぞ!!」
「まずゴールが存在しない時点で走る意味がないでしょ?1から10まで意味不明です王子」
「だ・か・らその王子ってやめろっつってんだろ!なに?お前俺の事嫌い!?」
「あれ気付かなかったんですか?とっくの昔に気付いてそれでも傍に置くから変な王子だとは思ってたんですよね?どうします?不敬罪で牢にぶち込みますか?」
「はっはー!そんな職権乱用してたまるかよ!!それでロズリエさんに嫌われたら俺が牢屋に入って死んでやるね!置手紙にお前の名前を書いて死因を作り上げた張本人に仕立て上げてやる!殺人罪で合法的に殺してやる!!」
「モーリーさん聞きました?この人公の場で殺人宣言しましたよ?王子としての自覚ってもんが無いですよね?」
「キサマこそ俺に仕える騎士という自覚が無・い・なー???従者が王子である俺にそんな口きいてタダで済むと思ってんのか?やっちゃうよ?おれやっちゃうよ?」
「さっきの発言と矛盾してますよオ・ウ・ジ」
「よーし上等だ戦争だこの野郎剣を持て!!今この場に開戦を宣言する!!」
「お二人とも。今は交流会のお時間です。お静かに」
「「はい。モーリーさん」」
くっそ、さすがにふざけすぎたか。モーリーさんが若干凄んできた。ていうかあの人おかしいよ。一人だけ登場する作品ジャンル間違えてない?いや爺が実は実力隠してた強キャラでしたって結構熱い展開で俺は好きだけど、このジャンルではその要素要らなくね?
「それと王子。そろそろロズリエ様がいらっしゃいます。身だしなみを整えた方がよろしいかと」
「え?まじで?まだ言ってた時間じゃなくね?」
「なんでも王子を驚かせたいという要望から少し時間を遅めに連絡してほしいと」
「え?カワイイ何その理由。ねぇなんで俺ってこんなロズリエさんから別の女に乗り換えたの?訳分かんないんだけど?」
「今の王子の言動と同じくらいなんでロザリエ様はこの馬鹿を見捨てないのか不思議で仕方ないですよ」
さーて騎士擬きが何か言ってるが、さっさと整えてロザリエさんに会いに行きますか。
「おい、無視すんな阿保」
「ミジェロ様、たとえ思っていたとしても言ってはいけない事がありますよ。一度思い留めてから発していいかを決断した後に、王子にのみ聞こえるように言いなさい」
「はい、すいませんでしたモーリーさん」
「おい、さっさと戻るぞ馬鹿二人」
「「分かりました
「おい、ルビおかしくね?」
そう言いつつおれは私室に戻りロザリアさんに会うにふさわしい身だしなみになるべく
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