214話_サキュバスと釣りと駆け引き
今日、晴れの日。
僕は天界にある釣り場へとやって来ていた。
【天界魚】と呼ばれる天界に住む魚を釣ることが出来ると釣り場があるとのことで、チャミュの案内でその釣り場を訪れていたのだ。
何故釣りをすることになったのかというと、数日前に家で談話をしていた時のこと。テレビの番組で釣りを紹介していたのだが、ソフィアが釣りはやったことがない、という話になった。
せっかくなので、チャミュが知っている釣り場に行って皆で釣りをしょうということになったわけだ。
そんなわけで、僕とソフィア、ミュウ、シェイド、レティにチャミュの6人で釣り場を訪れていた。
皆レンタルの釣り姿に着替え、釣り場にてレクチャーを受ける。水に濡れても大丈夫なように防水性のオーバーオールに長靴という出で立ちで、チャミュ先生の話を聞く。
今回は地上でいうルアーフィッシングということで、釣り針には魚の形をした仕掛けを取り付け方を教わる。
「これで大丈夫?」
ソフィアが不安そうにチャミュに尋ねる。
「うん、大丈夫だね。これを目掛けて大きな魚たちが寄ってくるんだ」
「偽物ってわからないの?」
「動かし方にコツがあるんだよ。まぁ、それは後で教えよう」
「ミュウ、それ何つけてるんだ?」
僕は、1人だけ魚ではない物を取り付けているミュウのことが気になって声をかける。
「これはね、仕掛けよ」
「仕掛けよ…ってそれ僕じゃねーか!!」
よくよく見てみると、僕が横にまっすぐ寝そべった形のフィギュアが釣り針にガッチリ刺さっていた。いつの間につくったんだそんなもの。
「えへへ、可愛いでしょ」
「えへへ、じゃねーよ。魚に変なもの食わせんな」
「失礼ね。この寝そべりシオリ2号はなんでも釣れるんだから」
「しかも改良型かよ!!」
僕のツッコミはさておき、チャミュ先生は皆に釣りの仕方をてきぱきと教えていく。
「以上が釣りの諸注意だ。わからないことがあったら私に聞くように。それでは早速釣りを始めようか」
チャミュの合図で、湖に向かった釣竿を投げる。
「釣竿全部を投げるギャグはいらないからな、シェイド」
「お、それはフリということかな?」
「ちげーよ!やるな、って言ってるんだよ!!」
レクチャーをしっかり受けているにも関わらず、シェイドが変なことをしでかしそうだったので釘を刺す。最近のシェイドは「自分が変なことをしている」ということを自覚した上で突拍子もないことをするので余計にタチが悪かった。
「旦那様、これは一番多く釣れた人がご褒美をもらえるということでよろしいですか?」
「ご褒美は誰があげるんだよ」
「それはもちろん旦那様ですわ」
「じゃあ僕が一番だったら?」
「私が旦那様に一日中尽くしてあげますわ♡」
「それじゃ結局あんたが得じゃないの。魚にでも食われてなさいよ」
隣でミュウがレティに辛辣な言葉を向ける。
「ゴシック女が何を言おうと聞く耳持ちませんわ。旦那様、というわけで私が1匹釣るごとにキスを」
「何が、というわけで、だよ。しないよ」
「そんなー」
「キスが釣れたらキス」
「上手いこと言ってんじゃねーよ。あと、ここは地上じゃないんだからキスは釣れないの」
くだらないことを喋りながら十数分。
すると、ソフィアの釣り糸に変化がみられ始めた。
「シ、シオリ、竿に……重みが……」
「かかったのか!?」
ソフィアの竿がグイグイと引っ張られ始める。
「これは大物じゃないのか!!シオリ、ソフィアの手伝いを!!」
「わかった!!」
チャミュの掛け声で、ソフィアの後ろに回り、ソフィアと一緒に釣竿を持つ。
「ソフィア大丈夫か!?」
「シオリ、かなり重いですよこの魚は!」
手にずっしりと重みが伝わる。これは相当でかい魚のようだ。
「私も手伝うわ」
「いえ、私が手伝います」
そこにミュウとレティが手伝いに来てくれた。のだが、僕の腰に手を回しピタッと密着している。
「…何してんの?」
「シオリを支えておいてあげるから」
「竿を持てよ、竿を!!」
「…こう?」
「その竿じゃねーよ!!下ネタかよ!!」
僕の息子に手を伸ばすミュウとレティにツッコミを入れる。そんな古典的ギャグに突っ込んでる場合じゃないのに!!
「シオリ…もっと力を…」
「悪い!!つい気が散っちゃって」
慌てて握る竿に力を込める。
「この竿、さっきより大きくなってない?」
「だーからー、そっちを触るなって!!チャミュ、なんとかしてくれー!!」
下の竿に興味津々な2人のせいで気が散ってしょうがない。
「(ゴクリ……)」
「お前も見てるんかい!!」
黙って下に視線を移すチャミュにもつっこむ。まともな奴はいないのかここには。
「私が手伝おう」
「シェイド!!」
シェイドが竿を取って手伝ってくれる。
「シェイドがいれば百人力だ!!いくぞぉ!!おおりゃあぁぁぁ!!!」
ソフィア、僕、シェイドの3人の力で思いっきり竿を引っ張り上げる。
しかし、タイミングが悪かったのか、ブチッと糸が切れ、僕たちは魚を逃してしまった。
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