第62話


「今日は昨日青藍ちゃんと約束したし焼き魚定食でも作ろうか」


「おー」




 朝、昨日とは違い起きてきていたのはもみじの代わりに青藍だった。もみじは昨日の夜、みんなが寝静まった後かなでと二人で夜更かしをして眠そうだったので青藍が代わりにすることになった。料理当番を青藍に任せた後もみじはかなでと共に一緒の布団で幸せそうに眠っている。桔梗は別に夜更かしをしていたわけではないのだがかなでに抱きしめられて身動きが取れなくて諦めて一緒にまだ眠っている。




「これから魚を焼くんだけどその前にお味噌汁を作ろうか」


「おっけー。私は何すればいいの?」


「そうだね。お味噌汁に入れる野菜とかを切ってもらおうかな。切り方はこんな感じ」


「うん。分かった。こんな感じ?」


「そうそう、上手だね」




 青藍は静人が先ほど切った見本を見よう見まねで切る。刃物自体はたまに使うからか不器用な恰好にならず綺麗に切り整えていた。




「よし、こんなものかな。あ、青藍ちゃんも切るの終わったみたいだね」


「うん。おにいさんは何を作るの?」


「出汁とかは今終わったからあとは入れるだけだねお味噌汁作ろうか」


「早く作ってお魚焼きたい」


「はは、そうだね。もう少ししたら焼こうかな。ホントならこのグリルに入れて焼くんだけどどうせだし自分で焼きたいもんね」




 静人は手早くぬめりなどを取り軽く塩を振る。魚が焼きたくてたまらない青藍は処理された魚を見てそわそわしだす。




「これでお味噌汁は大体できたかな。それじゃあお魚焼いていこうか」


「待ってた」


「フライパンでも焼くことは出来るみたいだし今日はそっちでやってみようか」


「頑張る」


「用意するのはクッキングシートかアルミホイル。今回はクッキングシートを使おうかな」


「どう使うの?」


「まずフライパンの上にクッキングシートを敷いてその上に魚を置いて」


「うん」


「あとは焼くだけだね。あ、クッキングシートはフライパンからはみ出さないようにね」


「分かった。こんな感じ?」


「うん。いい感じ。最初は弱火か中火で焼いていこうか。それと焼いてるときに油が魚から出てくるからそれを拭きとること。半分ぐらい火が通ったらこれを使って優しく裏返す。それからは蓋をして弱火で三分ぐらい蒸し焼きにして、最後にふたを開けて表面に焦げ目がついてきたくらいで終わり。って感じなんだけど覚えれたかな?」


「大丈夫。なんとなくだけど分かる。」




 静人は青藍に説明しながらフライ返しを見せる。青藍は静人の説明を聞いて自信満々な顔でフライパンを握る。




「むむ、意外に熱い。当たり前だけど」


「あはは、そうだね。あ、魚は焼きすぎるとおいしくなくなるらしくて全部で十分以内に終わらせた方がいいみたいだよ」


「そうなの? それじゃあ蓋をしてから三分くらいかかるって言ってたから、最初は七分ぐらいで終わらせないといけないんだね」


「そうだね。身が固くなるというかぱさぱさになるらしいからね。あとは任せても大丈夫そう?」


「大丈夫。任せて」


「ふふ、分かった。それじゃあ魚は任せた。僕はお味噌汁と漬物の準備をするね」


「うん」




 魚に関しては妥協を見せない青藍は自信満々な顔で頷いた後、真剣な顔でフライパンに乗った魚を見つめる。しばらくして静人が他の料理を終わらせて青藍のほうを見る。




「よし、あとは魚だけだね。どんな感じだい?」


「かんぺき」


「お、自信満々だね。それじゃあ盛り付けていこうか。魚は切り身だし一人一つずつでいいかな?」


「私は二つがいい」


「あはは、そうだね。少し多く焼いてるみたいだし二つ取ってもいいよ。料理した人の特権だね」


「料理してよかった。あ、もみじちゃん達呼んでくる」


「うん。こっちは準備しとくからよろしくね」


「分かった」




 青藍が呼びに行ってからしばらくしてもみじ達が目をこすりながら現れる。




「お兄さんおはようー。青藍ちゃんありがとうね」


「大丈夫。料理手伝ったらお魚一つ増えたからむしろありがたい」


「あはは、それじゃあ明日も一緒にやる?」


「やめとく。たまに増えるから嬉しいものだし」


「むー、一緒にしたかったのに」


「たまになら手伝うから」


「それならいいかな。あ、お魚いい匂い」


「うん、自信作」


「ほら青藍ちゃんの自信作が冷めてしまう前に食べ始めようか。ほら、かなでも起きて」


「うん、大丈夫よ。起きてるわ。起きてるわ……」


「とりあえず顔洗ってこようか。桔梗ちゃんももみじちゃんも一緒に行ってらっしゃい」


「はーい」




 桔梗以外の二人は眠そうだったが、顔を洗うとすっきりしたのか足取りも軽やかになって帰ってきた。そんな三人が椅子に座ったのを確認してからいつものように手を合わせる。




「それじゃあ、いただきます」


「「「「いただきます」」」」


「お味噌汁食べるとなんか落ち着くね」


「確かになのだ。この漬物も美味しいのだ」


「お魚は?」


「もちろん美味しいのだ。……やらんのだぞ?」


「うん。美味しいよ! 身がしっとりしてて柔らかくて美味しい」


「火加減にこだわったから。うん、おいしい」


「青藍ちゃんは本当に魚好きだね。夜も魚用意しとこうか?」


「出来れば欲しい」


「分かった。また後で買いに行ってくるね」


「ありがとう」


「あはは、別にいいよ。もみじちゃん達も遠慮しないで言ってね」


「分かったのだ」


「うん。分かった!」


「あ、みんな食べ終わったね。ごちそうさまでした」


「「「「ごちそうさまでした」」」」




 食べ終わり手を合わせた後、みんなで食器を片付けて朝の食卓が終わった。午前中、いつものように調べ物をしたりして過ごしていた静人達。

 そんな彼らに訪問者を知らせるチャイムが家に鳴り響く。


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