第42話
いつもの場所で一人でぼーっとしていた青藍の前に桔梗が現れる。
「ただいまなのだー」
「あ、桔梗。おかえり、早かったね」
「今回はそこまで遠くには行ってないのだ。というかみどりに人を紹介してもらうことを途中で思い出して急いで帰ってきたのだ」
「あー、でも、もしかしたらまだ会えないかも?」
「? なんでなのだ?」
「なんかお仕事頼んでたからしばらくは紹介できないって言ってたから」
「あっちも忘れておったのだ? まぁ、それなら相手に迷惑かかってないからいいのだ。わしがいなかった間に何か変わったこととかあったのだ?」
「えっと、あ、小屋作ったよ。ついでに椅子とかいろいろ作ったから今から一緒に行こう?」
「小屋を作ったのだ!? 青藍だけでなのだ?」
「最初はおにいさんに手伝ってもらったけど途中からは私一人で作ってた。楽しかったよ?」
「楽しかったのだ? 意外とそういうのが好きなのだ?」
「物を作るというか一人で黙々とやるのが好きなのかな。人に見られながらだと集中できなかったし。おにいさんもそれが分かったのか途中からは注意することだけ教えて離れてたし。まぁ、最初のころは近くにいた気がしたけど」
「静人らしいのだ。どれぐらいの大きさのを作ったのだ?」
「それは見てのお楽しみ。そこまで大きくないよ。うん」
「そうなのだ? 楽しみなのだ」
ゆっくり話をしながら小屋のもとに向かう二人組。青藍は場所が分かってるからか桔梗よりも先に小屋に気付いて指を指す。桔梗もそれにつられて小屋のほうを見る。
「あ、見えてきたよ。あそこにもみじもいるはず」
「おー、もみじもそこにいるのだ? ん? 結構大きい気がするのだ……」
「気のせいだよ。おにいさんにも聞いたけど普通の大きさって言ってたから。顔引きつってたけど」
「それは普通の大きさではないと思うのだ。まぁ、いいのだ。広いほうがいろいろと便利なのだ」
「あ、桔梗お姉さんだ! おかえり!」
「ただいまなのだ。元気にしてたのだ?」
「うん! 元気だよ! 桔梗お姉ちゃんは元気?」
「うむ。元気なのだ。もみじはここで何をしておったのだ?」
「青藍ちゃんがこっちに本を移したからそれを読みに来たの。料理もここで作ってるんだよ」
「前みたいに焚火で作ったりはしてないのだ?」
「お兄さんがいろり? って言うのを作ってくれたの!」
「囲炉裏なのだ? 普通に床に見えるのだ」
囲炉裏と聞いて床を見つめるがそれらしきものは見当たらない。不思議そうにあたりを見渡す桔梗に青藍が胸を張って囲炉裏には見えない床を指さす。
「ふふん。おにいさんからの要望で収納できるようにしたの。いろいろと本を漁って作ってみたんだよ。ほらこんな感じ」
「おー! 蓋を取ったらちゃんと囲炉裏なのだ! すごいのだ!」
「自信作」
「無表情なのにドヤ顔なのが伝わるのだ。今日はこれで料理するのだ?」
「その予定。本当はガスを使って料理する予定だったんだけど準備が間に合ってないらしくてまた明日になった」
「ガスを使うのだ? あー、そういえばそういう話をしていたような……。うむ、確か新しくここの住人になるかもしれないものの面接が終わってからの話ではなかったのだ? こっちが村を作って野菜をおろす代わりにみたいな話だったような覚えがあるのだ」
「この前渡した本がいい値段になるからってしばらくは提供してくれることになったよ? その時いなかったっけ?」
「忘れたのだ! まぁ、それならそれでしばらくは余裕があるのだから助かるのだ。それじゃあ今日は囲炉裏の料理を楽しみにしてるのだ」
「多分すごく単純なものになると思うけど」
「焼くだけなのだ?」
「串に刺した魚に塩振ってあぶるだけでもおいしいって聞いたから今日はそれを頼んだ」
「確かにそれだけでもおいしいと思うのだ。いっそのこと畑だけじゃなくて家畜も買うのだ?」
「さすがに魚は無理じゃ……? 餌がないし。魚って何食べるのかな」
「ううむ、飼ったことがないからわからないのだ。静人に聞くのだ」
「おにいさんなら知ってるよね。まぁ、そこらへんはみどりさんにも確認とる」
「みどりなら用意できそうな気はするが、さすがに飼うための施設は用意できんと思うのだ」
「確かに。さすがに難しそう。まぁ、そこらへんは集まってから聞こうよ」
「うむ、もみじは何か飼いたいものとかは無いのだ?」
「うーん……。畑だけで精いっぱいな気がするから大丈夫! 鳥とか牛とか豚とかはどうするの?」
「確かにそこまで飼いだすと人数が足りんのだ。米も食べたいから田んぼも作りたいのだ。こう考えるとさすがに三人だけじゃ厳しいのだ」
「全部作るのは無理だね。でも魚は絶対入れたい」
「う、うむ。分かったのだ。だからそこまですごまないで欲しいのだ」
「おっと、ごめん。先に米つくる? それともお肉のほう?」
「正直どちらでもいいのだ。米は作れる場所が限られるからまずそこを作らないといけないのだ」
「牛とかも決められた場所つくらないといけないよね。うーん。よし、おにいさんたちが来たときに決めよう」
「うむ、そうするのだ」
「私もその方がいいと思う!」
そうしてしばらく待っているといつものように鈴の音が聞こえてきた
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