遥か異界の地より

富士傘(ふじさん)

異界転移編

第1話

俺は今、空を見上げている。


ささくれた心に浮かぶのは後悔 不安 焦り 恐怖 そして怒りだ。

今の自分のあまりにも理不尽な境遇と、そして自分自身の不運に対する怒りだ。


 いや、誤魔化すのはよそう。


本当は上っ面な怒りで自分を誤魔化さないと心が押し潰されそうなのだ。俺は無敵の英雄やら屈強な軍人といった特別な存在では無い。平和な日本という国の何処にでも居る唯の中学生なのだ。こんな絶望的な状況にあって、心の底から自然な怒りを発露することが出来る。そんな強い心を持ってはいない。


俺は泣き喚きたい気持ちを、叫び狂いたい感情を必死で抑えながら膝を抱えて空を見上げている。


 そこには


自分の部屋の窓から見た夜空とはまるで別物の

今にも零れ落ちてきそうな満天の星空と

記憶にあるものより倍は大きい2つの月が不気味な輝きを放っていた。

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