鳥になって会いに行く|祝英台と梁山伯|気になる女顔の優等生は男装の麗人でした
宇美
第1話
「
「
「
「窈、窕、たる淑、女…… 次なんだっけ?」
「覚めても寝ても之を求む」
「ああ思い出した。 窈、窕、たる、淑、女は、覚めても、寝て、も……之を、求む」
その日も僕は祝君と、
二人の秘密の場所で授業のおさらいをしていた。
明日、
先生の前で暗誦しなければならない詩を、
お互いに一句ずつ互い違いに唱える。
祝君が一説を読み上げると僕は追いかけるように次を続ける。
僕が記憶の中から搾り出すようにとっかえつっかえ読むのに対して、
祝君は流れる小川のように口からすらすらと出てくる。
祝君のまろやかな歌うような声の中で、
詩の中の女の子は桃色の薄絹を翻して軽やかに舞っていた。
一方僕の時は、
がに股で牛のように重たげに歩いている。
「之を求むれども得ざれば、覚めても寝ても
「悠…悠…悠……」
「悠なる哉 悠なる哉、
祝君、
一人で勉強してもうすっかり暗記してるんだろう?
と僕が睨むと、
祝君はごめん、
と笑った。
無理に僕に合わせなくてもいい、
それなら別の所をやろうよ、
と祝君でもあまり覚えてなさそうな詩までめくった。
桃の
と声を張り上げる。
ここまで元気よく叫んおいて次の字の読み方が思い出せない。
祝君に助けを求めると、
祝君は、ああそれはね……
と僕の本に向かって頭を動かした。
祝君の玉のような肌に映りこんでいた竹の
緑がかった影がちらちらと動いた。
これは「シャク」と読むんだよ、
と教えてくれる。
暖かい息が僕の首元に当たる。
琥珀のような瞳に僕の姿が映る。
見渡す限りの竹林は
僕と祝君を外の世界からすっかり切り離していた。
「祝英台君!
祝英台君!
祝英台君!」
雉のような声が竹林に響いた。
僕達に『礼記』を教えている柳老師である。
祝英台君、
こんな所にいたのか?
と柳老師はみっしりと生えた竹の合間に細い体をくぐらせ、
やってきた。
ほら
と祝君に竹簡を渡された。
僕と祝君を順番に何度か見つめ、
ふうん君たちは仲が良かったんだね、
と不思議そうにおっしゃる。
くるりとむこうを向くと、
学舎のある方へとまた鶴のように歩いて行かれた。
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