第2話 SEASONS-2
「あっ、チャウが来た」
「おはよう、チャウ」
声を掛けられた固まりは手を振って応えた。
「あいかわらず、モコモコね、あんたは」
「だってぇ、寒いんだもん」
帽子を取ってマフラーをほどきながら、やっと口を掘り出したその女の子は答えた。
「ひろことどっちが寒がりかな」
「はぁい、あたし!」とひろ子は手を上げて叫んだ。
「だいたい、チャウはね、ちっちゃいから普通の服が合わないのよ。それで、モコモコして歩いてるのよ」
「でもぉ、寒いから…」
「寒いたって、…ちょっと、あんた、何枚着てるのよ?」
コートのボタンを外すと、厚手のセーターが見えた。
「だってぇ、寒いんだもん」
「すっごいわね、今日は」
「そんなに着てちゃ、ダルマになるのも無理ないわ」
「どっちかって言うと、ぬいぐるみじゃない」
几帳面にコートとマフラーを畳みながら、千春は答えた。
「だって、雪まで降ってるのよ。こんな時期から雪だなんて、イヤ。今年の冬はどうなるの…」
「ババシャツなんか着てたりして」
「……いいじゃない、寒いんだもん」
「ホント?いやぁ、あんた、いくつなの。恥ずかしいと思わないの?」
「だってぇ……」
「毛糸のパンツまで履いてたりして」
「……だめ?」
「ウッソォ、ホントに?」
「バッカじゃないの!」
「きょうび、小学生でも履かないわよ!」
「いくら、発育不良のチャウでも、幼稚園児レベルとは思わなかったわね」
「だって、おばあちゃんが…」
「ババシャツに、毛糸のパンツ。色気も何もあったもんじゃないわ」
「まぁ、チャウだからね」
「そうそう。発育不良のおチビさん」
「でも」ひろ子は、少しずつ千春に近づいていった。
「そこが、かわいいのよね」
そう言いながらひろ子は千春を抱きしめ頬ずりした。
「やめてよ、あたし、赤ちゃんじゃないのよ」
「いいじゃない、かわいいんだから。ほーら、ぷにぷにのホッペ」
「やぁーだ、あんたたち、いやらしいわよ」
「デキてるんじゃないの?」
「やだやだ、受験生なんて。はやく高校行って、カレシ作ろ」
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