8 技術的政策の分類図

図:https://19084.mitemin.net/i556156/


科学・技術と制度・政策には、

経済・社会活動に働きかける際の

直接・間接・自助・互助といった経路ルートの違いに応じて、

それぞれ4つの区分がありました。


技術と政策の互助ルートのうち、

政策側のルートが技術的(いわゆるハード的)政策でしたが、

それはさらに、技術のどのルートを助けるかによって、

3つのルートに分けられます。


(1)社会工学的政策……共同支援ルート

主力(中核)技術を助けるルートです。

資源保全・環境保護や防犯・防災において、

民間団体や市民の協力を促すため、

防災団体支援やごみ出しルール周知など、

社会工学的な組織・啓発技術を用いる政策です。

経済・社会活動全体を大きく変えてしまうような、

主力技術の悪用・誤用・副作用を防ぎ、活用するために、

自らもまた広く、経済・社会活動の中で共に働き支援する、

といった特徴があります。

豊かな工業社会では、大災害時に消防署だけでは手が足りず、

皆でルールを守らないと街はごみであふれてしまいます。

便利な情報社会では、特殊詐欺対策に銀行の協力も必要です。

名前の印象とは違って、

政策の実施を助ける社会工学の力を借りながら、

実は大きな主力(中核)技術の活用を助ける政策といえます。


(2)社会基盤インフラ政策……部分支援ルート

関連(周辺)技術を助けるルートです。

主力(中核)技術を物的資源に具現化する、

土木・電気・通信技術など関連(周辺)技術の健全性を保つため、

一般的な経済・社会活動からは得にくい支援を提供する政策です。

例えば、自動車や家電・パソコンなら民間市場が供給できますが、

公共施設や交通・動力エネルギー・通信網など、

社会基盤インフラストラクチャーの建設には公的な出資や調整も必要なので、

そうした大規模な物的資源の整備を行う政策です。


(3)研究・開発政策……特別注文カスタムメイドルート

研究・開発技術を助けるルートです。

科学・技術の研究・開発を健全に行うために、

利害を調整する政策です。

広い意味では経済・社会活動の一部とはいえ、

先行投資、情報の守秘・共有、社会的影響への配慮などの

必要性がある、研究・開発事業の特殊性に応じ、

いわば特別注文カスタムメイドの支援を提供する政策です。

英国が産業革命、米国が情報革命に成功した大きな理由に、

民間組織も含めた研究・開発政策の努力があげられます。


もっとも以上については、理論的な分類であり、

現実的には重なることもあります。

技術同士、政策同士、技術と政策の対象はつながることがあり、

政府や研究機関の活動も広義では経済・社会活動の一部であるうえ、

実質的には企業などでの技術開発や政策決定も多いからです。


校舎の建設は、教育政策と共に防災社会基盤インフラ政策にもなりえます。

新技術による通信網の開発・建設支援は、

研究・開発政策にも、社会基盤インフラ政策にもなり得ます。

企業による先端技術開発への支援は、

研究・開発政策と共に産業政策にもなりましょう。

同じ福祉法人や財務諸表が、組織・会計技術の成果であると共に、

経済・社会政策の手法である、といえるような場合もあります。


そうした重なりを考えるのも面白く、

さらなる政策の立案や連携に役立ちうるのではないかと思います。

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