第35話 家に帰るまでがお出掛けです。

次の日の朝食もかなり豪華だった。

香草のきいた白身魚のムニエルに半熟卵と鳥の丸焼き、牛肉のサイコロステーキまである。


スープはコンソメとミネストローネとコーンポタージュが準備されている。好きなものをチョイスできるのであろうか。

フワフワのパンに野菜サラダとデザートも何種類かあるな。


料理は、ワゴンに乗っており、ホテリエさんが少しずつ取り分けてくれた。

豪華な食事を食べながら皆楽しそうに話している。


食事が終わり、リビングで少し寛ぐ。

 「ケミン今日は直ぐに帰るの?」

キュリアがニコニコしながら今日の予定を聞いてきた。


「いや、土地の見積もりも気になるしラヴォージェと一緒に市庁舎に行こうと思ってる。其れとアパートの件と船の引き渡しも詰めてこないと」

途端にキュリアの顔色が曇る。


 「忙しそうじゃない、どのくらい掛かりそうなの?」

「昼までには終わらせたいなーと思ってるけど、女性陣は如何する?」


 「そうなんだ、みんなで街ブラしようって思ってたのだけど・・・」

「それなら女性陣だけで行ってきていいよラヴォージェが居たら何とかなるから」


 「ケミンも一緒に連れて行くつもりだったのよ・・・」

えーーーー!良かった。用事が有って・・・


女性陣全員からジト目で見られた・・・

 「ケーミーンー!其れどういう意味なのよ!」

「意味はないです・・・」


俺も学んだ・・・ここでは何も思わない・・・


「兎に角、そう言う事だから、女性陣だけでショッピングに行っていいよ、昼に市庁舎の近くの船着き場に集まろうね」

 「貴方、女性の買い物に付き合ったら大変な事になるって思ってたでしょ!」


「思って無いだろ!」

思ってないのに当てられたよ・・・


パッカー―ンとスリッパで叩かれた・・・だから痛いって・・・ガクン

 「まあいいわ!これで許してあげるわ!」


「キュリア狡いよ、誘導尋問なんて・・・」


「「「「「「「「「狡くない!」」」」」」」」


女性って怖いな・・・




俺達は早めのチェックアウトを行った。

勿論、専属で付いて貰った、ホテリエさん達や料理人さん達にチップは渡してあるよ!金貨だけど・・・


俺とラヴォージェは展示場に向かって船を走らせている。

「ラヴォージェさん、この船は耐久性が無いって言ってたけど、如何言う事なの?」


 「あと4日で溶けて無くなりますな、エナジーで作り出してますから自然崩壊するのですよ」

「それって本当に泥船じゃん!」


 「ですから、泥船に乗った心算でと言いましたが?」

「あれって冗談じゃなかったのか・・・」

 「いえ、冗談ですよ、直ぐには消えませんからハハハハ」


展示場に着くと昨日買った船にマストが立っていたセイルも張ってあるな、もう引き渡し可能なのかな?

俺達は、取引事務所に入った


「おはよう御座います。ローレンスさんはおりますか?」

 「ケミカリーナ様、おはよう御座います。会長を御呼びしますので少々お待ちください」


受付嬢が事務所に入り、暫くするとローレンスさんが出てきた。少し顔色が悪いな・・・


「ローレンスさんおはよう御座います、支払と船の引取りに来たのですが・・・、お顔の色が優れませんね」


俺が、そう話すと受付嬢が、紅茶を出しながら言う

 「昨夜、奥様からこっぴどく叱られたようで・・・」

 「そんな事は言わなくていい!」


てへぺろっとした顔をして受付嬢は戻って行った。気を取り直したようにローレンスさんは、言う。


 「ケミカリーナ様、引き渡しの準備は終わっております。そして昨日は誠に申し訳ございませんでした」


「あーケミンと呼んで下さい。ローレンスさんは気にしなくて良いですよ。俺が無知だったばかりにとんだご迷惑をお掛け致しました」


 「有難う御座います。支払いは、分割も出来ますが?」

「一括でお願いします」


俺はそう言うと商業組合のカードを出した。

 「組合に登録なさったのですね。少々お預かり致します」


ローレンスさんは、俺のカードを預かると事務所に入って行った。暫くするとカードと領収書を持って出てきた。


 「確かに、2500金貨受け取りました、此方が領収書です。それで今ある船は如何致しますか?此方で買い取ることも可能ですが?」

「あの船は、あと数日で消えてしまうので、だよねラヴォージェ?」


ラヴォージェが頷く。


 「成程、エナジー船でしたか、しかしあれだけの船を作るとなると相当のエナジーが必要となると思いますが・・・」


 「ケミン様のエナジーは膨大ですからあのくらいの船なら造作も有りません」

魔法で作った船はエナジー船って言うのか・・・


 「成程、それではお渡しいたしますので、船の方にどうぞ」

皆で船の方に歩いて行く、船に着くと運転席まで案内された。


 「ケミン様、この石にエナジーを流してください」

運転席の横に宝石のような石がはめ込んである。そこに触れてエナジーを流すと宝石の色が緑色に変わり光っていた。


 「此れでこの船がケミン様のものと登録されました。このまま乗ってお帰りになりますか?」

「はい、このまま行きますね、有難う御座いました」


 「解りました。今後ともご贔屓によろしくお願い致します。では失礼します」

そう言ってローレンスさんは船を降りて行った。ラヴォージェが作った船を消去!!で消し俺達は新しい船で移動した。




俺達は市庁舎に着くと。ラヴォージェが受付に行き見積もりの件でと受付嬢に話す。

すると、もう出来上がっていたのか、見積書が渡された。


「ラヴォージェ、いくらになってる?」

 「金額は、18537金貨ですな。値引きが537金貨で支払額は、18000金貨となっております」


「高いのか安いのかよく判らないな、まあ支払ってくるか」

 「おおむね相場だと思います」


俺は受付に行くと見積書とカードを渡す。受付嬢は、カードと見積書を受け取ると機械にカードを置き支払金額を入力していた。あんな機械が有ったんだなぁ・・・


受付嬢が戻ってきたので、カードと領収書を受け取りながら俺は次の件の事を聞く。

「今買った土地に建物を建てたいのだけど、何処に相談に行けばいいかな?」


 「工業組合の建築課が宜しいと思います。この奥に進んだ所に有りますよ」

受付嬢がさした方向に廊下が有り奥に繋がっていた。


「有難うございます。」


俺はお礼を言うとラヴォージェと一緒に奥に進み、建築課の受付に言った。

「此の庁舎の隣の空き地にアパートを建てたいのだけど、どなたか紹介して頂けると有難いのですが」


 「隣の空地と言うと、失礼ですがケミカリーナ様でしょうか?」

「はい、申し遅れてすみません、ケミンと呼んで下さい」


 「いえ、ケミン様、でしたらローレンス商会を重用なされば宜しいかと」

「え?ローレンスさんって建築もやってるの?」


 「王室御用達ですから・・・」


つまり、王族と同等とみなされてる俺達は、何をするにも先ずはローレンス商会を通すって事なのか。


「解りました、さっき会ってきたばかりなんだよなぁ・・・それにもう帰らないと」


 「では、工業組合の方からローレンス商会に伝えておきます。後で森のラヴォージェ様の所に行くようにと、要件は、アパートの建築で宜しいですね?」


「はい宜しくお願いします」


俺達が市庁舎に出て船付き場に戻ると女性陣達は、もう着いて待っていた。

「遅くなってごめんね」


 「大丈夫よ、私達も今着いたところだから、それよりもう船が納品されたのね」

「うん、乗り心地は最高だよ」


 「そう、よかったじゃない、じゃー戻りましょうか」

そう言ってキュリアは船に乗り込む、それに続いて皆乗り込んでいった。


帰りもまた優雅にお茶をしながら森の船着き場に戻ったが・・・




船が収まりきらないな・・・、全長が長くなった分船付き場に入らなくなっていたよ!

仕方ないので突貫で河川工事する事になった・・・


下流の河原だった部分を土魔法でどんどん削っていく船がきちんと収まるようになったら護岸を固めて桟橋も広げた。船を桟橋に係留してやっと自宅に戻って来れたのだった。


最後にこれかよ・・・めっちゃ疲れた気がするな・・・




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る