【web版】ガイスト×レブナント クソザコモブな俺は、相棒の精霊を美少女に進化させて最強に!

サンボン

第一章 クソザコモブと醜いゴブリン

第1話 クソザコモブ

「はあ!? どういうことだよ!」


 既に夜の十一時を過ぎているというのに、俺はスマホの画面を眺めながら思わず大声で叫んだ。

 だけど、叫びたくなった俺の気持ちも理解して欲しい。


 だって。


「つーか、何で俺が序盤で主人公にやられるクソザコモブ扱いなんだよ……」


 そう呟くと、スマホを放り投げて俺は頭を抱えた。

 といっても、別に俺がクソザコモブだなんて事実はどこにもない。いやむしろ、俺は選ばれた人間・・・・・・なのだから。


「ハア……エゴサなんかするんじゃなかったよ……」


 溜息を吐き、投げ捨てたばかりのスマホを拾い上げてもう一度画面を見る。

 そこには、『“ガイスト×レブナント”攻略まとめ』と銘打たれたページが表示されていた。

 というか、冗談交じりに検索サイトから自分の名前を入れてエゴサしたら、こんな訳の分からないところがヒットするなんてな……。


 しかも、ジュブナイル学園ファンタジーRPGのキャラクターの一人として。


 で、興味が湧いた俺は当然、俺と同姓同名のキャラクターの情報を見ると、俺の名前……“望月もちづき|ヨーヘイ”と一緒に、その評価が書かれていた。


『“国立アレイスター学園”の一年生。主人公が転校した時に真っ先に絡んでくるザコで、使役する“精霊ガイスト”の能力は学園中最弱。なのにゲームでは一応ボス扱いで、クリア特典によって二周目以降は仲間キャラクターとして編成可能に。だが、能力最弱な上に“精霊ガイスト“がクラスチェンジしても毛の生えた能力程度しか進化しないので、使うだけ無駄』


 そう……散々な言われようである。

 だが、それ以上に気になったのが。


「……なんで俺の名前だけじゃなくて、明日から通う学校の名前や精霊ガイストのことまで一致してるんだ?」


 いや、“国立アレイスター学園”は国内有数の精霊ガイスト使い養成校だし、精霊ガイストを題材にしたゲームを作ろうって考えた奴がいるのも理解できる。


 なのに、なんで俺の個人情報が勝手にゲームに使われてるんだよ。

 しかも、俺が精霊ガイストの力に目覚めたのは中学二年の時……つまり、去年だ。


 そこからゲームまで作って、『まとめサイト』まであるなんて、ちょっとおかしい。


 何より……。


「そんなタイトルのゲーム、リリースされてないんだけど……」


 俺はスマホの画面を見ながら首をかしげる。

 じゃあ一体、このまとめサイトは誰が作った?


「……ま、俺のことを知ってるっつーか、ひがんでるヒマな奴がストレス発散で作ったんだろーなー」


 多分、それが答えだろう。

 俺はスマホ画面をフリックしながら、『まとめサイト』を斜め読みしながらそう呟いた。


 まあ? 俺はこの国……いや、世界でも数少ない精霊ガイスト使いなワケだから? 嫉妬するのもしょうがないとは思うけどな!


 そう考えると少しだけ気分が晴れた俺は。


「出ろ、[グリーンオーガ]」


 おもむろに精霊ガイストを召喚した。


 すると、俺の目の前に緑色の小さな人型の精霊ガイストが現れる。

 まあ、見た目はお世辞にもカッコ良くはないが、腐っても精霊ガイスト。ハッキリ言って、人間の数倍強い。

 使役できる人間だって、一万人に一人いるかいないかだしな。


 だけど。


「せっかく俺が[グリーンオーガ]ってカッコイイ名前つけたのに、『まとめサイト』じゃ[ゴブ美]、だもんなあ……」


 俺は思わず肩を落とす。

 いや、『まとめサイト』いわく、俺の精霊ガイストは『属性:ゴブリン(♀)』って書いてあるんだよ……。


 俺はチラリ、と精霊ガイストを見ると。


「なあ……お前、実はなのか?」


 って、問い掛けたところで精霊ガイストが答える訳ねーか。

 などと思ったが。


『……(コクリ)』


 ……頷いたよ。


「じゃ、じゃあお前、属性はゴブリンで、女ってことでいいんだよな!?」

『……(コクコク)』


 おおお……ここにきて新しい発見だ……。

 だ、だけど、そうするとこの『まとめサイト』、実はかなりすごいんじゃねーか?

 というより。


「本当に、一体誰が……」


 ここまでくると、このサイトそのものが気味悪く思えてきた。

 なんで本人である俺が知らないような情報まで、こんな詳細に書かれてるんだよ。

 誰が? 何の目的で?


「ま、まあ、たまたま一緒だったってだけだろ! 偶然だ偶然!」


 俺はブンブン、と頭を左右に振り、思考を切り替えた。

 これ以上考えたところで、どうせ俺の理解なんか追いつかないしな。


 とはいえ……俺は一つだけ確認したいことがあった。


「なあ……お前、[グリーンオーガ]って名前、好き?」

『……(フルフル)』


 精霊ガイストはかぶりを振る。


「……じゃあ、[ゴブ美]は?」

「……(コクコク!)」


 あああああ! やっぱりコイツは[ゴブ美]だった!

 チクショウ! 俺が考えた名前なんかより、よっぽど嬉しそうにしやがって!


「ハア……じゃあ、今からお前の名前は[ゴブ美]な……」

『!』


 俺の言葉で、[グリーンオーガ]改め[ゴブ美]が手に持つ木の棍棒を振り回してはしゃぐ。


 そんな[ゴブ美]の姿を見て、俺は乾いた笑みを浮かべるのが精一杯だった。

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