第820話 戦闘用魔道具《魔石弾》
「逃がすかぁっ!!」
「シャギャアアッ!!」
リザードゴブリンに初弾を回避されたアルトは次の魔石弾を装填すると、リザードゴブリンに向けて放つ。先ほど魔石弾が爆発する事を学習したリザードゴブリンは発射された魔石弾を警戒し、跳躍して回避を行う。
しかし、それを予想してアルトは事前に次の魔石弾を用意しており、リザードゴブリンが逃げ場のない空中に飛び込んだ瞬間、魔石弾を発射させた。
「これで終わりだっ!!」
「シャアッ……!?」
空中に跳んだリザードゴブリンに対してアルトは次の魔石弾を発射すると、その魔石弾に対してリザードゴブリンは避ける手段はなく、咄嗟に身体を丸めて防御の耐性を取る。
次の瞬間に魔石弾がリザードゴブリンに的中し、爆炎がリザードゴブリンを包み込む。リザードゴブリンは至近距離から爆炎を浴びて苦しがるように床に落ちた途端に転げまわる。
「シャアアッ!?」
「どうだ、苦しいだろう!!」
闇属性の魔力が肉体に宿す死霊人形だが、決して不死身というわけではない。闇属性以外の魔法攻撃を受けた場合、特に強い光を放つ攻撃に対しては無事では済まない。
爆炎による光熱によってリザードゴブリンに宿っていた闇属性の魔力が打ち消され、徐々に黒色化していた肉体の一部が薄くなる。闇属性の魔力が爆炎によって消耗した事を現しており、この調子ならばアルトは勝てるのではないかと思った。
(よし、いける……これで止めだ!!)
アルトはとっておきの魔石弾を取り出そうとした時、ここでリザードゴブリンに異変が生じた。リザードゴブリンは自分に纏わりつく火炎に対してあろう事か口を開き、それを吸い込む。
「アガァアアアッ……!!」
「なっ!?何のつもりだ!?」
自分の身体に纏わりつく炎を喰らうかの様にリザードゴブリンは口内に炎を吸い込むと、その様子を見てアルトは嫌な予感を浮かべた。その彼の予感は正しく、リザードゴブリンの胸元に埋め込まれた死霊石が光り輝く。
どうやらリザードゴブリンは死んでしまった後も喰らう事で他の生物の特徴を得る力は残っていたらしく、今回の場合は驚くべき事に火属性の魔力を吸い込み、それを自分の体内に埋め込まれた死霊石と組み合わせて新たな能力を発揮した。
「アガァアアアッ!!」
「冗談だろう!?」
火炎を吸い込んだリザードゴブリンは自分の体内の闇属性の魔力と組み合わせ、黒色の炎を放つ。リョフは雷戟を使用する時に闇属性と雷属性を組み合わせた「黒雷」を作り出したが、リザードゴブリンの場合は火属性の魔力を取り込んで「黒炎」を生み出す。
黒炎はアルトに向けて放射され、それに対してアルトは咄嗟に避け切れないと判断し、手にしていたとっておきの魔石弾を放つ。
「頼む!!」
「アガァッ……!?」
アルトが取り出した魔石弾は火属性の魔石を加工して作り出した代物ではなく、水属性の魔石を削り取って作り出した代物だった。アルトはリザードゴブリンの放った黒炎に対抗するため、魔石弾を撃ち込む。
水属性の魔石弾は黒炎に衝突した瞬間に内部の魔力が暴走し、周囲に冷気を放つ。その冷気によって黒炎は掻き消されるどころか、床が凍り付いてしまう。
「シャアアッ!?」
「くぅっ!?」
リザードゴブリンとアルトの元にも冷気が迫り、咄嗟にアルトは身に付けていたマントで身を庇うと、マントは凍り付いてしまう。もしも生身の状態ならば氷漬けになっていた可能性もあり、リザードゴブリンの場合は身体にこびり付いていた炎が消え去る。
魔石弾は火属性以外の魔石でも弾丸は作れるため、水属性の魔石の場合だと広範囲に冷気を放つ。そのため、相手に衝突させれば氷漬けにする事が出来る。いくら死霊人形と言えども氷漬けにさせれば動く事はできず、確実に止めを刺せた可能性もあったが、無駄になってしまった。
(くっ……もう魔石弾はこれだけか)
収納鞄からアルトは最後の魔石弾を取り出すと、次の一撃でリザードゴブリンに的中させなければ彼は殺されてしまう。それを理解した上でアルトは魔石弾を装填すると、それに対してリザードゴブリンは警戒する様にアルトの様子を伺う。
お互いが膠着状態へと陥り、次の攻防で勝負は決まる。先に動き出したのはリザードゴブリンであり、アルトが動き出す前にリザードゴブリンは飛行船へと向かう。
「シャギャアアアッ!!」
「何をっ……!?」
唐突に飛行船に向けて移動したリザードゴブリンにアルトは戸惑うが、なんとリザードゴブリンは先ほどアッシュが船内から外へ抜け出すために切り取った飛行船の壁の残骸へ向かい、それを持ち上げる。
リザードゴブリンは船の残骸を振り回すと、それを確認したアルトは嫌な予感を浮かべ、咄嗟にボーガンを構えた。それを確認したリザードゴブリンはアルトに向けて残骸を放つ。
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