幕間 《自分達に出来る事を》

――王国騎士団と警備兵がシンとシャドウの捜索を行う中、白猫亭の方ではヒナはクロネと共に厨房に立ち、今回の騒動で被害を受けた人たちのために料理を作っていた。



「ほらほら、遠慮しないで!!どんどんと食べてね!!」

「ううっ……美味い!!」

「あ、ありがとう……でも、本当にいいのかい?こんなに食べさせてもらって……」

「遠慮は無用よ、こんな時こそ助け合わないと駄目よ」



白面や魔物によって被害を受けた人たちは白猫亭に集まり、温かい料理を味わう。中には家や家族を失った人間もおり、彼等は涙を流しながら食事を味わう。



「くそっ……母ちゃんにもこの料理を食べて欲しかったな」

「俺達が何をしたというんだ……」

「おい、ちゃんと食べろ!!どんな時も飯はしっかり食え、それが生きるって事だ!!」

「そうだぞ、こんな美味い飯を食べられるのは俺達が生きている証だからな!!」



大切な物を失った人間達に対して救援に訪れてくれた他の人間が励まし、そんな彼等に対してヒナは少しでも生きる希望を与えようと料理に励む。今の自分にできる事はこれぐらいしかなく、彼女は上を見上げてモモの事を思い出す。



(あなたもしっかりやりなさいよ、モモ!!)



上の階に居るはずのモモに対してヒナは笑みを浮かべ、こんな時だからこそ彼女はモモに出来る事があると伝え、彼女の分の仕事も請け負ってモモを想い人の元へ送る――





――上の階ではモモはナイのために今の自分の出来る事を考え、そして彼女はナイの煌魔石に自分のありったけの魔力を送り込む。白猫亭へ戻ってきたナイが持ち帰った煌魔石に対して両手を構え、彼女は意識を集中させる。



「……ふうっ、終わったよ。これ以上すると私の魔力がなくなっちゃいそう」

「あ、ありがとう……でも、大丈夫なの?」

「平気平気、ナイ君のためならこれぐらい……わあっ!?」

「危ない!?」



ナイの部屋にてモモは煌魔石に魔力を補給した後、魔力を使いすぎたのか彼女は足元がふらつき、咄嗟にナイはモモを抱きしめる。この際に二人の顔が間近にまで迫り、モモとナイは頬を赤らめた。



「あ、ありがとうナイ君……」

「い、いや……」

「……ねえ、一つお願いしていいかな?」

「え?」



モモはナイの身体にそのまま抱きつき、そんな彼女の行動にナイは驚いたが、モモはそんな彼に対して自分の想いを伝えようとした。だが、上手く言葉に出来ず、そこで彼女は別の言葉を伝える。



「その……こ、今度、二人だけで一緒に何処かに行かない?」

「えっ……」

「駄目、かな……?」



ナイはモモの言葉に驚いたが、彼女の泣きそうな表情を見て断る事が出来ず、約束した。



「うん、いいよ……じゃあ、今回の一件が終わったら二人で何処かに遊びに行こうか」

「ほ、本当に!?なら、約束だよ!!」

「ああ、約束する……必ず、戻ってくるよ」



モモはナイの言葉を聞いて喜ぶが、その一方でナイの方は彼女のためにも必ず戻らなければならないと改めて覚悟を決めた――

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