幕間 《その頃の王都の外では……》

「ドルトン、これからどうするんだ?城門は開きっぱなしだが、俺達は中に入るのはまずいんだろう?」

「うむ、ナイ達の事は心配だが……この状況では王都に入る事は無理じゃろう」



ナイ達に仙薬を渡した後、ドルトンとイーシャンは王都の前に馬車を停車させて待ち構えていた。未だに城門は開け開かれており、アルトを人質にしたクノが城壁の兵士達の注意を引いている事は間違いなかった。


クノとアルトの役目はナイ達を王都に戻す事であり、その後は城壁の兵士が市中に移動しない様に一人でも多く引き付ける。しかし、いくら王子を人質に取っていると言っても何時までも兵士達が大人しくしているかは分からない。



「俺達に出来る事はないのか……ヨウの奴の予知夢も気になるな」

「うむ、だが予知夢の最後はヨウもはっきりと覚えてはおらんそうだ。前の時のように外れてくれればいいのだが……」

「くそっ、もっと薬を作っておけば……うおっ!?」

「な、なんじゃっ!?」



草原内に轟音が鳴り響き、驚いた二人は振り返ると、遠方の方で火の玉のような物が撃ち上がっている事に気付く。それを見た二人は何事かと思い、ここでドルトンは双眼鏡を取り出す。



「あれはいったい……」

「おい、何が見えるんだ!?」

「ええい、急かすな……駄目じゃ、儂の老眼では見えん」

「ああ、もう貸しやがれ!!」



イーシャンはドルトンから双眼鏡を受け取ると、彼の代わりに火の玉が上がった咆哮に双眼鏡を向ける。すると、かなり離れた場所に存在するが、王都へ向けて接近する軍隊を確認する。


一千は軽く超える数の騎馬隊が王都へ向けて近付いており、その旗を見たイーシャンは度肝を抜く。その旗の紋様は「虎」の顔が記されており、この国の北部に存在する国境の守護を任されているはずの「猛虎騎士団」が王都に接近している事に気付く。



「あ、あれは猛虎騎士団だ!!猛虎騎士団の旗を翳してやがる!!」

「馬鹿な……猛虎騎士団は国境の警備のために王都から離れていると聞いておったが……!?」

「嘘じゃねえっ!!しかも、す、凄い数だ……いったいどれだけいるんだ!?」



王都に向けて接近する猛虎騎士団の姿を見てドルトンとイーシャンは嫌な予感を浮かべ、この場に留まるのはまずい気がした。二人は急いでここを離れる必要があると判断し、商団に声をかけた。



「おい、こっちに猛虎騎士団が近付いている!!なんだかやばい雰囲気だ、離れた方がいいぞ!!」

「えっ!?騎士団が!?」

「そんな馬鹿なっ……」

「言い争っている場合ではない!!早く退けっ!!」

「は、はい!!」



ドルトンの言葉に商団の人間達は慌てて従い、一方でイーシャンの方は双眼鏡で猛虎騎士団の姿を確認し、何が起きているのかと冷や汗を流す。



(先頭を移動しているのが猛虎騎士団の団長か……なっ!?)



騎馬隊の戦闘を移動する騎士の姿を見てイーシャンは愕然とした表情を浮かべ、戦闘を走っている騎士はあろうことか「漆黒の鎧」を纏っていた――

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