第618話 巨鬼殺しと鋼の剣聖
「――お前達、やってくれたな!!」
「すいません!!」
『いや、本当にすまん』
「えっと……」
「クゥ〜ンッ(ぷるぷるっ)」←震えている
訓練場にてガオウは土下座を行い、その隣ではゴウカが正座していた。その様子をナイは少し離れた場所で伺い、他の冒険者に至っては逃げ出してしまう。
ギルドマスターのギガンは訓練場の惨状を確認して頭を抑え、この事態を引き起こした二人に対して激怒していた。地面に亀裂が走り、塀は壊される。ただの訓練でここまでの事態に陥る事など普通は有り得ない出来事である。
「お前達は黄金級冒険者の自覚はないようだな……はっきりと言ってやろう、お前達の力は最早人の領域を越えている。それを踏まえた上で生きていけと何度言えば分かる!?」
「いや、本当にすいません……」
『むうっ……面目ない』
「はあっ……もういい、お前達にこれ以上に叱りつけても意味はなさそうだ。それよりも君が何故、ここにいる?」
「えっ!?えっと……」
急に話しかけられたナイは困り、今現在のギガンの気迫はゴウカさえも上回るほどの気迫を感じた。そんな彼に話しかけられてナイは咄嗟に言い返せず、困っているとここでガオウが口を挟む。
「お、俺が呼んだんだよ!!坊主が冒険者に興味があるなら、見学に来いってな……なっ!?」
「えっ!?いや、その……」
「ほう、冒険者に興味があるのか」
『おおっ!!そういう事だったのか!!』
ガオウはギガンの気迫に気圧されて何も言えないナイに対して咄嗟に口を挟み、それらしい嘘を吐く。その話を聞いてギガンは納得し、ゴウカは嬉しそうな声を上げた。
『冒険者に憧れているのか、なるほどだから前に会った時もここに居たんだな!!よし、そういう事ならば俺が冒険者のイロハを教えてやろう!!』
「ゴ、ゴウカ?どうしてそんなに嬉しそうなんだ?」
『ん?いや、この者が冒険者になれば訓練相手として戦えるだろう?一目見た時から気になっていたんだ、この者が強い事をな』
「ほう……やはり、気づいていたか」
ギガンはゴウカの言葉を聞いて流石は王都最強の冒険者だと感心し、最初に会った時から一目見ただけでナイの強さを感じ取ったらしい。
彼はナイが冒険者になりたいという話を聞いて都合がいいと判断し、今この場で冒険者になって先輩である自分の訓練相手を務めてほしい事を伝える。
『ギルドマスター!!この少年の強さは俺が認める、だからすぐに冒険者にしてくれ!!そうすれば戦っても問題ないんだろう!?』
「お、お前な……自分が戦いたいために冒険者にさせようとすんな!?」
『ん?おかしなことを言うな、この少年は冒険者に興味があるから見学に来たんだろう?そう言ったのはお前ではないか』
「いや、それは……」
ガオウは自分が咄嗟に吐いた嘘のせいでややこしい事態に陥り、どう言い訳を使用かと考えとき、ここでギガンがナイの姿を見て確認を取る。
「待て、見た所随分と若そうだが……年齢を教えてくれるか?」
「え?あ、14才ですけど……」
「そうか……残念だが、ギルドの規定で未成年者は冒険者にする事は出来ない。つまり、15才になるまで君を冒険者にする事は出来ないんだ」
『何ぃいいいっ!?』
「うるせえよ!!」
「ウォンッ……」
ギガンは冒険者ギルドの規則でナイを冒険者にする事は出来ないと伝えると、ゴウカの方が衝撃を受けた声を上げる。その一方でナイも未成年者は冒険者にはなれない事は知っていたため、安堵した。
(良かった……冒険者になっていたらこんな人と戦わされていたのかもしれないのか)
王都へ赴いたころはナイは冒険者になれないことに嘆いていたが、仮に冒険者になっていた場合、ゴウカに目を付けられて彼に勝負を挑まれたかもしれないと考えると今は冒険者にならなかった事に安心する。
しかし、ゴウカは諦めきれないのかギガンの両肩を掴み、どうにかナイを冒険者にする事は出来ないのかと頼み込む。
『ギルドマスター!!それはないだろう、これほどの力を持つのに冒険者にはなれないだと!?俺の国では12才からでも冒険者になれたぞ!!』
「生憎だが、王国では未成年者は冒険者ギルドに加入させる事は許されていない」
『むむむ……よし、ならば俺の国に連れて行って冒険者にさせる!!それなら問題はないな!?』
「問題大有りだ馬鹿野郎!!そんな事、許されると思ってんのか!?」
『いいではないか、少年だって冒険者に……ぬうっ!?少年!?何処に消えた!?』
不穏な気配を感じたナイは「隠密」の技能を発動させて存在感を消し、ビャクと共に冒険者ギルドから既に抜け出していた――
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