第477話 旋斧と岩砕剣の二刀流 烈火の真の力
「はぁあああっ!!」
「グギィッ!?」
「ギィアッ!?」
「グギギッ!?」
旋斧に火炎を纏わせ、岩砕剣に紅色の魔力を宿した状態でナイは剣を振り払うと、十数匹のホブゴブリンが空中に吹き飛ぶ。二つの魔剣に同時に魔法剣を発動させ、ナイはホブゴブリンの大群を蹴散らしながら教会へと接近する。
右手の旋斧には火属性の魔力を流し込み、左手の岩砕剣には地属性の魔力を流し込む。二つの魔力を同時に操るのはナイは初めてだが、何故か今の自分ならば出来るという確信があった。
「うおおおおっ!!」
『グギャアアアッ!?』
剛力を発動させてナイは二つの魔剣を軽々と扱い、次々と敵を蹴散らしながら先へと進む。しかし、ホブゴブリンの軍勢もやられてばかりではなく、ここで大盾を手にしたホブゴブリンの集団が集まり、ナイの元へ突っ込む。
「「「グギィイイッ!!」」」
「くぅっ……!?」
大盾越しに体当たりを仕掛けてきたホブゴブリンの集団に対してナイは二つの魔剣を重ねて受け止めると、後方へ押し込まれる。だが、ここでナイは目を見開いて剛力を利用して逆に押し返す。
「舐めるなぁっ!!」
「「「グギィイイイッ!?」」」
数匹のホブゴブリンを相手にナイは腕力で逆に押し返し、吹き飛ばす。巨人族を上回る膂力でナイは大盾を構えたホブゴブリンの集団を蹴散らすと、岩砕剣を振りかざす。
地属性の魔力を送り込む事で重量を増加させた状態でナイは岩砕剣を振り払うと、大盾で防ごうとしたホブゴブリンの集団は吹き飛び、空中にいびつな形で折れ曲がった大盾が舞う。
「「「グギャアアアッ!?」」」
「はあっ……ミノタウロスの方がまだ手応えがあったぞ!!」
大盾ごと破壊する事でナイはホブゴブリンの集団を蹴散らし、改めて残りのホブゴブリンと向かい合う。あまりのナイの圧倒的な強さにホブゴブリン達は恐怖の表情を浮かべ、後退る。
この調子ならば教会まで辿り着けると思った時、突如としてナイの上空が赤く輝き、驚いたナイは振り返るとそこには自分に迫る「火球」を視界に捉える。
「うわっ!?」
「キャインッ!?」
上空から振ってきた火球に対して咄嗟にナイは避けると、地上に火球が衝突した瞬間に爆発する。その様子を見たビャクは悲鳴を上げ、ナイも慌てて建物の屋根に視線を向けると、そこには杖を構えたゴブリンメイジが存在した。
「ギアアッ……」
「ギギギッ……」
「ギアッ……」
ナイの周辺の建物の屋根の上には10匹近くのゴブリンメイジが存在し、人間から奪ったと思われる杖を構えていた。まさかこれほどの数のゴブリンメイジがいるとは思わず、ナイは驚く。
(こいつら……!?)
ゴブリンメイジたちはナイに狙いを定め、魔法を放つ準備を整えていた。それを見たナイは咄嗟に反魔の盾を構えるが、数が多すぎた。
『ギアアッ!!』
建物の上のゴブリンメイジ達は杖を構えると、杖の先端に取り付けた火属性の魔石が光り輝き、火球を作り出す。そしてナイの元へ向けて同時に放たれ、その攻撃に対してナイは反魔の盾では防ぎ切れないと判断する。
この際にナイは旋斧を構え、一か八か吸収するべきか考えたが、現在の旋斧は火竜の魔力を吸収した事で魔力を吸う機能が弱まっている事を思い出す。
(まずい、このままだと……!?)
仮に回避を試みても火球の数が多すぎて地上に衝突した瞬間に大爆発を引き起こす。そうなればナイも巻き込まれてしまい、逃れる事は出来ない。
万事休すかと思われた時、ここでナイの元へ近づく影が存在した。その人物はナイの前に移動すると、四方八方から接近する火球に向けて剣を振り払う。
「――させません!!」
「えっ……!?」
『ギアッ――!?』
無数の火球からナイを守ったのは「ヒイロ」であり、彼女は烈火を振り払うだけで全ての火球を切り裂き、本来ならば衝撃を受けた時点で爆発するはずの火球が消え去る。
ヒイロが火球を切り裂く姿を見てナイは驚くが、一方で彼女の魔剣は火球を切り裂いた途端に火力が増し、その状態でヒイロはホブゴブリンに向けて剣を放つ。
「火炎斬!!」
『グギャアアアッ!?』
「うわっ!?」
「ウォンッ!?」
烈火を振り払った瞬間に強烈な炎の刃が放たれ、まるで先ほどの火球の魔力を吸収したかのように強烈な炎の斬撃だった。その様子を見てナイは驚くが、ヒイロはそんな彼に叱りつける。
「ナイさん、一人で無茶をしないでください!!」
「ヒイロ……?」
「貴方は一人じゃありません、私達も一緒にいるんですよ!!」
「ヒイロの言う通り」
ヒイロの他にも聞き覚えのある声が聞こえ、ナイは振り返るとそこには如意斧を構えるミイナの姿が存在し、彼女は如意斧を絵の部分を伸ばして屋根の上に立つゴブリンメイジに放つ。
「そりゃっ」
「ギアアアッ!?」
「ギャウッ!?」
絵が伸びた事で間合いが変化した如意斧が屋根の上に立つゴブリンメイジを2体切り裂き、切りつけられたゴブリンメイジは悲鳴を上げながら地上へ墜落した。
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