第422話 ゴンザレスとエルマの再会

「まあ、私は戦闘には全く役に立ちませんが、それ以外の事は優秀なので頼りにしてください。あ、これはお近づきの印という事で上げます」

「え?あ、どうも……これは?」

「最近作ったばかりの魔力回復薬です。市販の物よりも効果は高いですよ」



イリアは青色の液体が入った小瓶を手渡し、それを見たナイは市販の魔力回復薬よりも色が濃い事に気付く。一応は出発前にナイも回復薬の類は購入しているが、貰っておいて損は無いと思い、とりあえずは懐にしまう。


実験と称してナイの実力を見定めたイリアは彼を認め、飛行船に搭乗する事を認める。そもそもこんな実験など必要あったのかと思われるが、ナイの現在の正確な戦闘力を計れた。



「今回は興味深い情報データが手に入りました。次は魔物と戦っている姿を見てみたいですね」

「魔物って……」

「まあ、それは今度にしましょう。そうそう、そういえばマホ魔導士から貴方に会えば話しておくように言われた事を思い出しました」

「マホ魔導士から?」



マホとはナイは知り合いであり、彼女からナイは魔操術の基礎を教わっている。現在のナイが生き残れたのは彼女から教わった魔操術のお陰と言っても過言ではなく、マホとまた出会った時はお礼が言いたいと思っていた。



「マホ魔導士も討伐部隊に参加するので明日の船に乗る予定です。その時、ナイさんと二人だけで話したいことがあるそうです」

「マホ魔導士が……」

「それとマホ魔導士のお弟子さんも今はここに居ますよ。会いに行きますか?」

「ゴンザレス君とエルマさんがここに?」



ナイはマホの弟子であるゴンザレスとエルマの事を思い出し、この二人はイチノで共に戦った事もある。あまり親交があったわけではないが、ガロが冒険者をやっていた事も気にかかり、二人に会ってみる事にした――





――ゴンザレスとエルマは王城の一室にて共に同じ部屋で待機しており、ゴンザレスは黙々と腕立て伏せを行い、一方でエルマの方は弓の手入れを行っていた。そんな時にナイを連れたイリアが訪れると二人は驚く。



「お前は……まさか、ナイか!?久しぶりだな!!」

「ゴンザレス君!!それにエルマさんも……お久しぶりです」

「まさか貴方とここで会えるなんて……」

「ど、どうも〜」

「失礼しま〜す……」

「あんたら、久しぶりだね。ゴン、またでかくなったんじゃないのかい」



部屋の中に入ってきたナイにエルマとゴンザレスは驚くが、続けて他の者達も入り込み、この時にテンはゴンザレスを見て親し気に語り掛ける。


どうやらマホの弟子たちはテンとも面識があるらしく、ゴンザレスはテンの姿を見ると起き上がり、力強く握手を行う。



「テン指導官、久しぶりだな」

「ああ、本当に久しぶりだね……本当に大きくなったね。それに力も強くなったじゃないかい」

「ふっ……指導官も相変わらずだな」



体格差があるのでテンが伸ばした手はゴンザレスの大きな手で包み隠される形になるが、テンはゴンザレスの握りしめる力に笑みを浮かべる。まだゴンザレスが未熟だったころ、彼女が直々に指導してやった事もあった。



「エルマも久しぶりだね、あんたは昔から変わらないね」

「そうだな……そういうお前は随分と変わってしまったな」

「えっ……?」



エルマがテンに対して砕けた口調で話した事にナイ達は戸惑うが、エルマは普通の人間ではなく、エルフなので外見よりも年齢を重ねている。だからこそエルマはテンとは昔からの付き合いであり、実はテンよりもずっと年上だった。



「こうしてると昔を思い出すね。あんたが修行という名目で聖女騎士団で一緒に活動していた時の事を……」

「ああ、あの時は大変だったけど本当に楽しい日々だった。そういえばそろそろの王妃様の命日だったな……一緒に墓参りにでも行くか」

「……そうだね、今回の件をちゃちゃっと解決したら久々にあの人に顔を見せに行こうかね」



テンはエルマの言葉を聞いて苦笑いを浮かべ、その様子を見てナイ達はテンとエルマが親し気に話す事に意外に思う。


その後はしばらくは雑談を行った後、ナイはこの場にいない三人目の弟子のガロの事を尋ねる。どうしてマホの弟子でありながら彼が冒険者を行っているのかを問い質す。



「あの……実は昨日、ガロを見かけたんですけど、彼は冒険者になったんですか?」

「何!?それは本当か?」

「全く、あの馬鹿……本当に冒険者になっていたのか」

「え?二人とも知っていたんじゃ……」

「俺は冒険者の試験を受けるとは聞いていたが、本当に冒険者になっていたとは……」



エルマもゴンザレスもガロが冒険者になっていた事は初めてらしく、二人ともガロが冒険者になろうとしていた事は知っていたらしいが、まさか本当に冒険者になっていたとは思っていなかったという。

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