第327話 大型ゴーレム

「……赤褐色という事は、もしかしたらそのゴーレムは亜種の可能性が高いでしょう。恐らくは……レッドゴーレムと呼ばれる亜種です」

「レッドゴーレム?」

「ゴーレムは吸収した魔石の魔力によって色合いが能力が変化します。僕も実際に見たわけではありませんが、文献によると火属性の魔力を大量に吸収したゴーレムは肉体が徐々に赤みを増し、高熱を帯びる能力を手にするそうです」

「ほう、ならばレッドゴーレムとやらは巨大化する能力もあるのか?」

「いえ、レッドゴーレムに巨大化の能力は備わるとは書かれていません。しかし、ゴーレムは魔力を吸収すれば吸収する程に体型が変化し、巨大化していくという話を聞いた事があります」

「という事は……その大型ゴーレムは火山の魔石から大量に火属性の魔力を吸収した事で亜種に変異し、巨大化したという事ですの?」



ドリスの言葉にアルトは頷き、それ以外に大型ゴーレムが巨大化して赤褐色に変化した理由が思い当たらない。国王はアルトの知識に感心し、彼を褒め称えた。



「アルトよ、お主のお陰で大型ゴーレムの正体が判明した。流石は我が息子だ」

「あ、ありがとうございます」

「しかし、ここから先が問題じゃな……そのレッドゴーレムの弱点については記されていましたか?」

「ゴーレムの弱点と言えば水を浴びせる事だと聞いているが……」



マジクがアルトにレッドゴーレムの弱点を尋ねると、ここでバッシュが口を挟む。彼の言う通り、通常種のゴーレムは水を浴びせると何故か肉体を構成する岩石が溶けて泥のように変化する。だからゴーレムは決して水場には近づかず、雨が降る際は必ず地面の中に潜り込んで身を隠す習性を持つ。


しかし、アルトは昔読んだ本の内容を思い返し、レッドゴーレムの弱点に関しても記されていた文章によると、亜種であるレッドゴーレムの場合は通常種とは弱点が少々異なる事を告げる。



「レッドゴーレムの弱点はです。通常種のゴーレムならば普通の水を浴びせても弱点になりますが、レッドゴーレムの場合は違います」

「魔法で生み出した水でなければ弱点にならない、という事か?」

「そういう事です。下手に普通の水を与えると逆に発火してしまうそうです」

「発火?水を浴びせたら燃え上がるのか?」

「はい、レッドゴーレムは体内に大量の火属性の魔力を帯びています。だから普通の水では効果はありません」

「ふむ、確かに火属性の魔法で生み出した炎を打ち消せるのは、水属性の魔法のみか」



普通の炎ならば水でも消す事は出来るが、レッドゴーレムの場合は火属性の魔力で身体を発熱させており、ただの水では熱を抑える事が出来ない。だから通常種のゴーレムの弱点である水を浴びせても効果は無いに等しい。


レッドゴーレムを倒すためには水属性の魔法攻撃が最も有効であり、そして全ての魔物に共通する弱点を突けば必ず倒せる。



「レッドゴーレムも魔物である以上は必ず「経験石」が存在します。そこを破壊すれば必ず倒せるでしょう」

「経験石か……」



全ての魔物は体内の何処かに経験石を宿しており、如何に肉体が岩石で構成されているゴーレムであろうと経験石は必ず存在する。その弱点を突けばレッドゴーレムであろうと倒す事は不可能ではない。



「マジクよ、城内で水属性の魔法を扱える者は何人おる?」

「正直に申し上げますと……片手で数えるぐらいしかおりませんな。儂もマホ魔導士も水属性は不得手としておりますので」

「むうっ……それは困ったな、アルトよ。本当に水属性以外の魔法では倒せぬのか?」

「絶対に倒せないというわけではないでしょうが、他の属性の魔法では効果は薄いと思われます」



魔導士であるマジクもマホも水属性の魔法は苦手としており、そもそも人間も森人族も水属性の魔法を得意とする者は殆どいない。相性的に水属性と良いのはぐらいであり、仮に王都中を探しても水属性の魔法を扱える魔術師は10人いるかどうかだろう。


レッドゴーレムに最も有効的な攻撃を与えられるのは水属性の魔法だけだが、生憎とその水属性の魔法攻撃を行える人材が少なすぎる。だが、ここでアルトは水属性の魔法攻撃を行える人物に心当たりはあった。



「国王様、魔術師でなくとも水属性の魔法攻撃を行える者はおります」

「何?それはどういう意味だ?」

「魔法剣です。魔法剣の使い手ならば水属性の魔法攻撃を行える者もいます」

「おおっ、それは本当か?」

「待て、アルト……お前、まさかナイの事を言っているのか?」

「えっ!?」



アルトの言葉を聞いてバッシュは真っ先に彼がナイの事を言っている事に気付く。確かにナイが手にしている旋斧であれば水属性の魔石を利用すれば水属性の魔力を宿して攻撃を行える。だが、その場合だとナイをレッドゴーレムとの戦闘に参加させる事になる。

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