閑話 〈爆炎の槍〉
――黒狼騎士団の副団長にして公爵家の令嬢でもあるドリスはこの国の中でも3本指に入る騎士だと言われている。実際に彼女の実力は団長であるバッシュをも上回ると呼ばれ、仮にバッシュが国王の座に継いだ場合は騎士団を引き継ぐのは彼女以外にはあり得ない。
王国騎士団の中でも黒狼騎士団は王位継承権を持つバッシュが率いている事もあり、有名な存在だった。そして副団長であるドリスは「魔槍」の使い手であり、フレア公爵家の血筋の人間は火属性の適正が非常に高い。
ドリスの魔槍はヒイロが扱う烈火と同様に火属性の魔力を宿す事に特化した武器であり、ヒイロの烈火は火炎を刃に纏うのに対してドリスの場合は火力を高める事に重視した武器だった。
「……ここですね、例のボアの亜種が目撃されたという場所は」
「はい、間違いありません。足跡も確認されました」
ある時にドリスは騎士団を率いて王都から離れた草原に赴くと、王都に赴こうとした商団の馬車がボアの亜種に襲われたという連絡を受け、確認のために出向く。
通常は魔物が引き起こした問題は冒険者ギルドが対応するのが一番だが、今回襲われた商団はフレア公爵家とも関りがあり、何よりも亜種などの魔物は普通の魔物よりも危険度が高いため、並の冒険者では太刀打ちできない。
「ドリス様、見つけました!!どうやら奴が商団を襲った個体で間違いないかと!!」
「あれは……なるほど、確かに報告通りの姿をしていますわね」
ドリスは部下からの報告を受けて視線を向けると、100メートルほど離れた位置に横たわる黒色の毛皮で覆われた巨大な猪を発見した。通常のボアよりも体型が2倍程大きく、その姿を見たドリスは団員達を下がらせた。
「貴方達は下がっていなさい、私の馬を頼みますわ」
「ドリス様、まさか御一人で……!?」
「私なら大丈夫、それよりも貴方達は離れていなさい……巻き添えを喰らいたくはないでしょう」
「は、はいっ!!」
「お前達、距離を取れ!!」
愛馬を他の団員に預けるとドリスは赤く輝くランスを取り出し、それを手にした状態でボアの元へ近づく。その様子を団員達は緊張した様子で見守る。
ボア亜種は近付いてくるドリスの気配に気づいたのか、瞼を開くと身体を彼女の方に向け、鼻息を鳴らす。その迫力は普通のボアの比ではなく、赤毛熊をも貫き殺せそうな鋭利な牙を見せつけた。
「ブフゥウウウッ……」
「……来なさい、苦しまない様に一撃で仕留めてみせますわ」
「――フゴォオオオッ!!」
自分に向けて殺気を滲ませた視線を向けてくるボアに対してドリスはランスを構えると、彼女は余裕の笑みを浮かべた。その態度を見てボア亜種は彼女に向けて突進を行う。
体長だけではなく、移動速度も普通のボアを上回り、もしも赤毛熊などの魔物でも突き飛ばす程の勢いでボア亜種はドリスの元へ突進する。だが、自分に迫りくるボアに対してドリスはランスを構えると、その能力を発動させた。
「爆槍!!」
「フガァッ――!?」
次の瞬間、ボア亜種の視界は火炎によって覆いつくされ、強烈な衝撃と共に巨体が吹き飛んだ――
――この数時間後、王都には全身が黒焦げと化したボア亜種の死骸が運び込まれる。この時にドリスは討伐の報告を行う際、困ったように答えたという。
「やりすぎてしまいましたわ……希少な亜種の毛皮を手に入れる好機だったのに丸焦げにしてしまいましたわ」
彼女は心底残念そうな表情で自分が倒したボア亜種を見てため息を吐き、後に報告を受けたバッシュは彼女の言葉を聞いて何とも言えない表情を浮かべたらしい。
※時間通りに投稿できなかったので今日は特別に閑話を2話投稿します!!もう1話はいつも通りの時間帯に投稿します!!
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