閑話 〈バーリの末路〉
――悪徳商人であるバーリは魔物の密輸、人攫い、人身売買を行っていた事が暴かれ、現在の彼は監獄の中だった。彼に協力していた闇組織の組員も同様に監獄に送り込まれ、彼等は重労働を強いられていた。
「起床の時間だ!!何時まで眠っているんだ!!」
「ひいっ!?」
「さっさと牢から出ろ!!」
牢の中で眠りこけていたバーリは看守の怒鳴り声に起こされ、慌てて牢から出ると、既に他の囚人は並んでいた。朝の点呼にもしも一人でも囚人が欠けていたら全員が朝食抜きになるため、囚人達はバーリに怒鳴りつける。
「おい、さっさと並べ新入り!!」
「飯抜きになるだろうが!!」
「くうっ……どうして儂がこんな目に」
「ごちゃごちゃ言ってんじゃねえ!!さっさと並べ!!」
バーリは自分の現在の境遇に嘆くが、元々は彼が悪事に手を染めた事が原因であり、そこに一切の同情の余地はない。既にバーリは終身刑が決まっており、彼がもう外の世界へ出てくる事はないだろう。
しかし、バーリは他の囚人と違う点があるとすれば商人だった彼は独自の人脈があり、彼は捕まった時のために「隠し財産」を持っていた。
(今に見ておれ……すぐにこんな場所から抜け出してやる)
今の所は大人しくしているバーリだが、彼はこの監獄から抜け出す事は諦めておらず、彼の切札は外の世界に残した隠し財産だった。バーリの事を知る人間であれば彼が内密に莫大な財宝を隠し持っている事を知っており、もしもバーリが死ねばその財宝の在処は分からない。
近いうちにバーリは自分の隠し財産を狙う輩が訪れ、自分を脱獄させる代わりに財宝を要求してくると考えた。折角集めた財宝を他の人間に渡すのは癪だが、背に腹は代えられない。
(儂はこいつらとは違う、一流の商人は常に最悪の事態を想定して行動するのだ。儂はお前等のようなクズ共とは違う!!)
表面上は大人しくしながらもバーリは心の中では囚人や看守を見下しており、一刻も早く自分を救い出す人間が現れる事を願う――
――同時刻、バーリが所有権を持っていたとある建物に人影が存在し、その正体は傭兵のダンを殺した二人組だった。片方は暗闇に隠れて姿は良く見えないが、もう片方の剣士の手元には大きな宝箱が掲げられていた。
「あのバーリという男、思っていたよりも財宝を隠し持っていたな」
『ああ、見つけるのには苦労したぜ。だが、これで奴の隠し財産は全て回収したはずだ……馬鹿な奴だ、まさか自室の机の引き出しの裏に地図を書き残していたとはな』
バーリが心の頼りにしていた隠し財産は既に回収され、もう彼を救う存在はいない事が確定した。これからバーリは誰も助けが来ない事にも気づかず、囚人生活を送る事になる――
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