第110話 繭?

 枝豆を採り尽くし、先へ向かう4人。


 どうやらまだ未練があるようで、まだないかと周囲を見渡している様子がなんだか・・・・まあ僕も少し未練はあるんだけれど。


 デルクが先頭で進む一行。

 しかしデルク以外の3人は未だ周囲を探しながら歩いているので、気が付けば随分と離れてしまっている。

「戻ってきたらきっとあるから、次の所へ向かおうよ。」


 願望が入り混じったデルクの発言に3人は希望を見出したかのように

「そ、そうだよな、ダンジョンだし、また採れるよな?」


 レイナウトが食いしん坊キャラだとは思わなかったよ!

 そうデルクは突っ込みたくなったが、我慢する。そしてそれに追従するかのようにロースが、


「お豆ってお通じにいいのよ。しかも塩で茹でただけでどうしてあんな味がするかなあ?」


 ・・・・よだれが垂れていますよロースさん。


「美味。またデルクと一緒に食べたい。」

 そんな事を言うセシルって、天使だ・・・・ここに天使が降臨した!そうじゃない、既にしていた!


 そんなどうでも?いい事を思いながら97層に到達するも・・・・其処に居たのは、


「なあ、あれって・・・・繭、だよな?」

 4人は茫然と立ちすくむ。

 レイナウトが指摘するまでもなく、人の子供ほどはありそうな繭がそこかしこに。


「きゃあああ!!!」

 ロースが何かを見て、レイナウトの後ろに隠れるので、どうしたのかと思えば、


 なんか芋虫っぽい?毛虫?何かが大量にうごめいているのが見える。


「デルク、あれきっと蚕だよ。」

 蚕!じゃああの繭は、蚕の繭?そうであれば繭を確保すれば絹が手に入る?


「え?でも僕の知っている蚕って、掌ほどの大きさもないはずなんだけど。掌と言うより、指ぐらい?」


 そしてよく見ると、ぬいぐるみみたいな白い・・・・虫?が羽ばたいているのが見える。飛ばない?飛べないみたい。


「かわいい・・・・」


 蚕の成虫って何だか癒される。

 だけどねセシル、蚕の繭から糸を紡ぐには、その前に繭を中身ごと茹でないといけないんだよ?

 成虫してしまった場合って、繭の方は糸にしにくいから、その前に茹でるんだ。

 確か本に記載してあったはず。


 その後中身はお亡くなりになるから、そのまま食べるのは一寸ね・・・・粉にしたりするみたい。


 あ、これ収納かばんに入れちゃったらどうなるんだろう?

 生きた状態だと入らないのかな?それとも入れたら死んじゃう?


 そして蚕はきっと人を襲わない・・・・はず。

 僕は警戒しつつ繭に近づき、収納かばんを繭に当てると、すっと中に入るのが分かりました。

 あれ?すんなり入った。


「どうするの?」

「セシル、これは後で多分茹でてね、糸にするんだ。これで何とか布を織る事が出来れば、カバンを作る布ができ、それで一応収納かばんが作れるんだよ。」


「どうやって織るの?」

「まあそこはスキルかな?」


 考えてなかったけどどうしよう。

 織機から作る?

 一応実物は機織り職人の所で見た事もあるし、道具も使ってみた事はあるんだけど。

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