第3章
第24話
おはよう皆の衆!!
ご存じオレは主人公の親友ポジションの
いやいや潔い脇役自己紹介に心配しないでくれ…!
主人公になることを目指す男であることに変わりは無い。
なぜオレがこんなにテンション高く、元気良く自己紹介したかと言えば今日は週の真ん中、水曜日なのだ。
土曜日のお出かけイベントも無事?に終了し、新しい週も始まり月、火とすごし水曜日。
水曜日、もはや週の始めというフレッシュな気分も無くなる曜日、だが反対にゴールの土曜日まではまだ遠い。
なんとも中途半端な中だるみな気分の曜日なのだ。
そんな水曜日に負けないためのハイテンションなのだ!
主人公は負けないのだ。
いかなる悪にも、いかなる困難にも、いかなる挑戦にも、打ち勝つ者。
それが主人公なのだ!
だからオレは今日も朝、オレをダメ人間へと変身させようと企む『悪』布団に打ち勝ち。
駅に着いたときに、定期ごと財布を忘れてきたことに気づき取りに帰るという『困難』にも打ち勝ち。
遅刻ギリギリのために駅から学校までダッシュするという『挑戦』に負けて……遅刻している所です。
ハイ、ごめんなさい。
主人公の道いと遠し…。
1時間目、古文だっけ…。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
無事?に遅刻し、しっかりと怒られながらも、途中参加のぶんだけ、最初から参加している他のクラスメートというモブ集団よりも集中しながら授業を受けることに成功したオレ。
やはり彼らのような脇役、有象無象とは一線を画すという点において主人公的資質アリの証明して満足感にひたる。
言わばオレはレ点のついている人間なのだ。
遅刻をしたという事においてはオレは立場としては遅刻せずに時間どおりに登校したクラスメート皆よりも下の立場においやられてしまったのだろうが、そんな下に位置しようともレ点が付くことによって読み順ではオレが先に来ることになるのだ。
つまりオレが言いたいのは、もし仮に…どんなに自分が下位の存在でも、カーストの下に居ようと、絶望などするなと言うことなのだ。
そして自分を押し殺し、周囲に合わせて、気を使い、カーストの上に行こうなどと考える必要などもまるで無し。
下なら下のままでいいのだ。
ただレ点を付けれれば良いだけの話なのだ!
つまり「レ点のついた人間であれ!」ということをオレは主張したいのだ。
そんなアホアホなことを考えている内にいつの間にやら授業は進み倒していた。
…やべ、途中から全然聞いてなかった。
全然集中してねーじゃん…。
途中参加の古典の授業を途中不参加してしまった、おちゃめなうっかり者のオレでもわかること言えばもはや、てふてふは蝶のことであるということぐらいのものだ。
……なんか皆、てふてふ
同じ語を2回繰り返す言葉というのは人間の耳にとって気持ちいい言葉なのかもしれない。
川柳、俳句なり、ラッパーなりが韻ふむのとかもその繰り返しの耳障りの良さに起因するのではないだろうか。
蝶じたいも、『ちょうちょ』ってちょっと繰り返す感じだし、ちょうちょの後にちょっとって付けると、ちょっと『ちょ』ばっかりになってゲシュタルトが崩壊しそうで、ちょう怖いけど。
……ともあれ、このクラスにおける、てふてふとは転校するやいなや、その美貌とオーラでいきなり学校中の話題の人となり、なんだか噂によるとファンクラブすらも発足されているという転校生ヒロインの
そんな雨宮鈴花のほうへと目を向けてみる。
とは言え、雨宮の席はオレの右ななめの前に位置する。
授業中にふとヒロインを見つめていると、こちらの視線に気づいたヒロインと目が合って…。
彼女からノートの切れはしに何かを書き、くしゃっと丸めてこちらへと投げられて、それを広げて見てみると『なに見てんのよ!』なんて憎まれ口が書かれていて、それに返すように、こちらも『別に見てねぇし!』なんて書いて返事の手紙をまた投げる。
……なんてラブコメ展開が繰り広げられる可能性も限りになくゼロに近い親友ポジに相応しい席の位置。
オレからでは彼女の後ろ姿しか見れない。
もちろんオレからの視線などむこうは気づくはずもない席の位置となっております、ハイ。
しかし時の人、転校生の雨宮鈴花の学校での位置づけというかキャラクターというか、存在も定着しつつある。
その美少女っぷりに転校当初はクラスメートおよびその他のクラスからも、わらわらと男女問わずギャラリーが1目見ようと教室まで来たものだ。
もちろん、その中には直接コミュニケーションをとろうと話しかける者も少なくなかったが、雨宮鈴花の人目をひきつけて離さないほどのルックスの良さとは相反する、基本的に冷めていて他人への興味の低さから来るコミュニケーション能力の低さ。
いわゆる塩対応というやつに、軽い気持ちでちょっかいをかけたナンパな校内の男子どもは完膚なきまでに撃沈した。
しかしそんな中でも『容赦無い雨宮さんハンパねぇ』とますます熱を上げるアホな男子も増えたようで。
女子は女子で、そんなクール系美少女転校生に友達になって仲良くしようというよりも、憧れの対象として崇めるような者が多々表れたようだ。
さっきも言ったがファンクラブが密かに出来ているようで、基本的には雨宮鈴花という学園のアイドルは、近づくのでは無く、遠くから見守ってキャーキャー騒ごうというのが多くの生徒たちのスタンスとなったようだ。
今では直接、馴れ馴れしく話しかけるような人間はほとんど居なくなり、校内で一目置かれるような高貴な存在として雨宮鈴花の学校における共通認識は確立していた。
長々と雨宮の校内での位置づけを紹介したものの、それはあくまでも【一般的な生徒】に限った話だ。
このハーレムラブコメはそんな一般的な生徒以外の人間たちのお話なのだ。
今日もまたそんな一般的な生徒以外の人間たちがあれこれとハーレムラブコメを引き起こすのだろう。
親友ポジであるオレをよそに…。
いやいや、どっこい!
そんな光景を指をくわえて、ぼけっと見ているオレ様では無いわい!!
そう、オレはまだまだ元気なのだ。
こんなハーレムラブコメ絶対オレは認めない!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます