12.ネジバナ〈捩花〉

1.

新しい鞄を提げて

遊歩道を引き揚げるとき

いつもいる鳥の顔つきを覚えたといって

青空から生まれた、新しい肩で

飛べそうなんだ


一部を忘れて一部を忘れないで、次第に拗れていった

執着の錆を踏んで空を仰いでいた

少しだけ息をさせて

身体中の桜が散るまで

体内を駆け巡った花弁の無言


こちらを向いている誰かに気づいた

それから口がカラカラで

喉の奥を林檎色が揺れていた

同じ目でもう一度言ったら

間違っているのがあなたでも、私はきっと何も言えなかった



2.

受容されない叫びを叫ばずどう扱えば良かったのだろうか

押し殺した結果として神経は干からびたのだろう

悲しみは悲しみのままで

キッチンへ持ってゆくことにしよう


4年かかった具材で作るスープは

大した味なぞしなかった

香辛料を目一杯入れて

飲み干そう


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