⁂nothinng***偽りの家族⁂

第28話⁂久美子殺害の理由！⁂

星日亡き後反逆罪で粛清された人数は10有余人にも及ぶのですが、その中に満正の妻ジウの父親金高日総合大学教授リ・ジホ55歳の双子の弟リ・ウジンが居たのです。

満生の妻ジウの父親金高日総合大学教授リ・ジホにして見ますと、一心同体同然の弟ウジンの死は到底受け入れられるものではありません。

幼少期の頃から家庭を持つまでは、いつもどんな時も一緒で、片時も離れた事が無かった可愛い弟であり友達、また時にはいたずらっ子に虐められて窮地に陥った時にも真っ先に救ってくれた弟。

「コラ————！よくもジホを虐めたな————！エ～イ！」

｛よく河原の石を拾って投げ付けてくれたり、棒で殴り付けたりして数人のわんぱく達を一網打尽に追い払ってくれたものだ。あんなチビだったウジンがよくもまあ～？あんなに果敢にやっつけられたものだと思ったが？あの時とんでもない大きな石っころをバンバンぶつけていたなあ～？後で親御さん達がうちの息子に怪我させてくれたな————！・・・よく怒鳴り込んで来たもんだ！｝

窮地を救ってくれたどんな時も一緒だった命と同じくらい大切な弟が殺害されたなど到底受け入れる事が出来ません。

いつも一緒のそんな生活は彼女が出来ても変わる事無く4人でよく出掛けていたのです。

それは家庭を持ってからも変わる事は有りませんでした。

ジウもウジンを自分の父と変わらない位に思っていたのです。

だから家族3人の久美子に対する復讐心は想像に難くありません。

久美子に対する憎しみはいかばかりのものだった事か。

まあ～！その気持ちは痛いほど分かりますが？？？

ウジンにも処刑されるだけの理由が有るので仕方ありません。

金星日の側近で南北関係を担当していた朝鮮労働党統一戦線部長リ・ウジンが廃妃同然で辺境の地に追いやられた正妻ハユン妃を政治経済の発信拠点、平壌に戻した第一功労者なのです。

その為ハユン妃は自分に次ぐ地位『第一書記』のポストをウジンに与えたのです。

まあ～？『第一書記』と申しましてもハユン妃一派の中での事で正式ではありません。

ですが、政権が事実上ハユン妃一派に移れば、その地位『第一書記』も揺ぎ無いものになります。

その為にも何としても久美子の存在が邪魔で仕方ないのです。

じゃ～？何故ハユン妃を辺境の地から戻したのかと申しますと、満正の生母久美子が、まだ若造の何も分からない坊やに入知恵を付けてこの国を牛耳って行く事への危機感。

このままでは久美子が強大な権力を持ち我々の思い通りにならなくなってしまう。

何としてもそれだけは避けたかった朝鮮労働党統一戦線部長リ・ウジンは、育ちの良いお嬢さん育ちの世間知らずで向こう見ずな暴れ馬、ハユン妃を辺境の地から戻したのです。

それはハユン妃を操る事は、まだ久美子を操る事からしたら遥かに簡単なのです。

当然久美子もお嬢さん育ちではあるのですが、歩んで来た道のりには大きな隔たりがあります。

それはそうです。愛する家族、恋人と無理矢理引き裂かれ、こんな異国の地に連れてこられて、星日が嫉妬に狂い腹違いの息子スホを他の男の忘れ形見と忌み嫌い殺されかけた。

それでどんな事をしても助けようと命乞いをしてスホの殺害は食い止める事は出来ましたが、もう直ぐ4歳のスホと無理やり引き裂かれもう何十年も会えずじまい。

｛離れ離れになったスホの事を思うと居ても立って居られず悲しくて、辛くて、苦しくて幾度死のうと思った事か｝

久美子には普通の人間の何十倍も何百倍も悲しみ、苦しみ、怒りや、憎しみを抱え、それを乗り越えて来た強さが有ります。

又、人の痛みの分かる万能の力を兼ね備えた幹部達が束になっても太刀打ち出来ない逸材。

放って置けば大変な事、自分等の出る幕などどこにもありません。

ハユン妃とは比べ物にならない人の心を読み取る力、人間の奥行きが有ります。

権力と金を自由自在に操る事こそ彼等の狙い。

「その為には久美子を何としても無き者に！！！あやつを殺さないと我々の未来は断たれたも同然！久美子さえ死ねば、あんな若造の満生など赤子の手をひねる様な物！何としても久美子を殺せ————！」

肩書だけはこの国の最高指導者ですが、何も分からない若造を操る事など造作もない事。

世襲制のこの国。

何も分からない裸の王様満正を王様に据えて自由自在に操り金と権力を我が物に！

ところが久美子側の精鋭達もあちこちに秘密裏にスパイを忍ばせて情報収集に余念が有りません。

そしてハユン妃一派が久美子殺害に動いているとの情報をキャッチしたのです。

｛大切なこの国を裏で牛耳っているこの国の最高指導者満生の母にして裏の女帝久美子を何としても守り通さねば！！！｝

久美子側の精鋭達も久美子を守る為に懸命に秘密裏に動いています。

厳重な厳戒態勢が敷かれたのですが？？？

それでもやはり事件は起きたのです。

星日が亡くなり幾ばくも立たないある夜の事。

朝鮮王朝時代の死罪は毒殺が一般的でしたが、｛誰が盛ったのか？｝直ぐに足が付きます。

あの夜、久美子がリビングでくつろいでいると久美子目掛けて　””バ－ン・バ―ン・バ―ン””　3発の銃口が放たれたのです。

「皆の者犯人を追え————ッ！」

「久美子様大丈夫ですか？」

無数の捜査網を張り巡らせていた久美子側の精鋭達により犯人が分かったのです。

そして精鋭達の厳しい追求によりハユン妃一派の仕業だという事が判明したのです。

久美子は瀕死の重傷を負ったのですが、何とか一命を取り止める事が出来たのです。

そしてこの事件に関与した十数名が粛清と言う名の元に処刑されたのです。