第2話

放送が終わり、街がまた普段の賑わいに戻る


さあ私も家路につくとしよう。


私は私と反対方向に歩く一人の男と肩をぶつけた

男は籠った声で「失礼。」とつぶやいてまた歩き出した


男の手元を見るとボストンバックを一つ持っていた


恐らくあの男は先程の放送で呼ばれていた人なのだろう

この「シガン区」には放送で呼ばれた人は「ヒガン区」に住める権利が与えられる

だが、「ヒガン区」がどんな所なのか、どこにあるかはここに住む人々は誰も知らない


学校の先生からも「ここよりも良い場所で何でも出来る所。」としか教えられない。


第一、電波塔に呼ばれるのはいつも大人だけで子供が呼ばれた事は

少なくとも私の記憶には一度もない。まあ私は友達が減るのはあまり嬉しくはないからいいけど。

以前、私の父も電波塔から選ばれて「ヒガン区」に行ってしまったが

あれからどれくらい経っただろう。一向に帰ってくる気配も連絡もない。

「ヒガン区」は家族のことも忘れてしまう程楽しいのだろうか。

「シガン区」も十二分に楽しいと思うのだけれど…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る