11. 護りに来たのさ

GM:ルーニャ卿が運転する魔動列車はぐんぐんスピードを上げながら、首都東西線を西(グロッソ港駅方向)に走ります。


ジルベルト:他の乗客がいたり、スクルータが乗り込んでたりしない?


GM:皆さんだけです。スクルータがホームに取り残されているのがチラッと見えたことにしましょう


ジルベルト:ならひとまずは安心か……


GM:このタイミングで先ほど見たスクルータの魔物知識判定をしましょうか


ジルベルト:スクルータのあの様子。もしや……!

> 魔物知識判定: 2d+4+3→ 17


GM:弱点はわかりませんでしたが正体はわかります。ルールブックⅡのP426、魔動機8レベルの「スタースナイパー」です


===

【スタースナイパー】

魔動機 8レベル

 超遠距離射程を誇る攻城用魔動機。重い投擲槍を射出し、その射程は100mにも及ぶ。部位はひとつでHPは67。


 詳しいデータはルールブックⅡを参照。

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ジルベルト:攻城兵器で暗殺するんじゃない!!


タイズ:まずいですね。ルーニャ様を《かばう》ことができない以上、100m以内に接近された時点でわたくしたちの負けです


GM:その通りですね。ルーニャ卿とスクルータの距離が100m以下になったら敗北だと思ってください


ジルベルト:「ルーニャ卿。列車を走らせたはいいが、なにか行先に心当たりはあるのか?」


 ジルベルトが窓の外に視線を向けるとそこには見慣れたキングスフォールの街並みが広がっていた。先程のバスラ戦のような裏路地に入ってしまえば100mの射程も役には立たないだろう。しかし市民に危害が及ぶかもしれない作戦をルーニャ卿が採用するとは思えない。では、この大都市のどこにスクルータを迎え撃つにふさわしい場所があるのだろうか?


ルーニャ(GM):「……海ね」


タイズ:「海、でございますか?」


ルーニャ(GM):「このまま首都東西線を走ってグロッソ港駅に向かい、船に乗って沖にでるわ。そうすればヤツは船を探して港をうろつくはず。そこを貴女たちが叩くのよ」


ジルベルト:「ルーニャ卿を囮にする、か。作戦としては悪くないかもしれん」


GM:今更ながらミカリは憧れのルーニャ卿と一緒に列車に乗っているという事実にモジモジしています


ジルベルト:呑気だなあ


ルーニャ(GM):「それにしても聞いたわよ?今回の騒動はあのバカマグナルが起こしたんですってね?」

GM:ルーニャ卿は運転のために感情を抑えてはいますが、それでも激しい怒りが滲み出ています


タイズ:「ルーニャ様。それは後ほど話すとして……」


ルーニャ(GM):「部下は重傷を負ったし、私も市民も怪我をした。列車のダイヤも総崩れ!これが全部あのバカの仕業だなんてね!!」

ルーニャ(GM):「もしもひとりでも犠牲者がでたならあのバカを極刑に処すわ」


タイズ:そうなるよなあ

ジルベルト:「まあルーニャ卿。いまはそのことはいいではないか。とにかく運転に集中して……わ!!」


 突然、甲高い音を立てて魔動列車にブレーキがかかる。進行方向に強いGを受けた一同は壁に押しつけられた。


タイズ:不可抗力でジルベルト様に押し付けられます

ジルベルト:「むぎゅ……タイズ、タイズヤワラカイ!」


GM:(笑)

GM:何があったのでしょうか?完全に停止した列車から前方を覗いてみると、レールの上に瓦礫が散乱しているのが見えます


ジルベルト:「え?なんで?誰がこんなことしたの?」


タイズ「困りましたね。これでは進むことが……あ!」


ジルベルト「タイズどうした?」


タイズ「そういえば先ほど、バスラは首都東西線沿いで暴れていたと」


GM:はい、正解です。バスラが暴れたことで首都東西線は通行止めになっています。7番線と8番線が無人だったのもそのせいです


ジルベルト:「あちゃー!そうなるとここからは徒歩で行くしかないな」


GM:しかしそうは問屋が卸しません。皆さんがグロッソまでのルートについて話し合っていると、後方から別の魔動列車が猛スピードで突っ込んでくるのが見えます


タイズ:「フラグ回収でございますね」


ジルベルト「言ってる場合ではない!みんな列車から飛べ!!!」


--

 ジルベルトが叩き割った窓から一同は飛んだ。着地の瞬間、ふたつの列車が衝突し直前まで乗っていた機関車両が紙箱のようにつぶれていく。


 凄まじい轟音と土煙。

 ジルベルトとタイズは瓦礫の山をかき分けて立ち上がる。これだけの事故でありながら奇跡的に怪我はなかった。だが……


「ミカリ!ミカリしっかりしなさい!」


 ルーニャ卿が悲痛な声で叫ぶ。その側で倒れているミカリの下半身は瓦礫に埋れて動けなくなっていた。それだけではない。よくみると線路後方以外の三方が瓦礫に囲まれ逃げ場がない。


「ルーニャ様、私を置いてお逃げください」

「なに言ってるの!貴女を残していけるわけないわ!」


 やがて土煙が晴れる。

 線路後方から、レールの上を歩いて、無傷のスクルータがゆっくりと近づいてきた。

--


タイズ:「スクルータ。ずいぶん大物じみた登場でございますね」


GM:スクルータとの距離は130mとしましょう


タイズ:「仕方ありません。わたくし達が囮になるのでその間にお逃げください」


ルーニャ(GM):「ミカリを置いて逃げられないわ!それに逃げるにしてもどこへ?」

GM:スクルータがいる後方以外は瓦礫の山なので移動不可能です


ジルベルト:「囮じゃないわ、タイズ。倒すのよ」


タイズ:「しかし敵が一度でも全力移動をすればもう射程範囲内。ルーニャ様を護りきれません」


ジルベルト「ふむ……」


GM:詰んでますね。ではお察しの通り、ここでマスターシーンです


--

 その時だ。

 「おーい!」とずいぶん呑気な声が瓦礫の向こう側から聞こえた。振り向くとそこには瓦礫の山をよじ登るマグナル博士の姿があった。


「おー、いたいた!ミカリとスクルータの信号がこちらに向かってきてたから……ってわあ!」


 ガラガラ!と音を立ててマグナルが瓦礫の山から転がり落ちる。一同は再び土煙に包まれた。

--


マグナル(GM ):「いてて……はあ。なんとか間に合ったみたいだね」

マグナル(GM):ぱんぱんと土を払いながら立ち上がります


ジルベルト:「ずいぶん間抜けじみた登場だな」

タイズ:「なにをしに来たのでしょう」


ルーニャ(GM):「そうよこのバカ!いったいなにをしに来たのよ!」


マグナル(GM):「なにをしに?そんなの、決まっているだろう?」とヘラヘラ笑いながらカニのような彫像を取り出します


 次の瞬間。

 キュン!と空気を切り裂く音と共にスクルータの鉄槍が飛んできた。100mの彼方からルーニャ卿を貫くはずだったその槍は、しかし巨大なカニ型魔動機 カルキノスの《かばう》によって阻まれてしまう。


マグナル(GM):「ボクはね。愛する姫と、ボクたちの愛娘を、護りに来たのさ」


PL×2:えええええ!!??

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