魔動機たちと幾世紀の恋
河内はろ
プロローグ
どこまでも続く若草色の地平を、二人乗りの魔動バイクが駆けていく。
ハンドルを握るのは女性ルーンフォーク。走りながら片手で器用にコンパスを取り出して現在位置を確認すると、彼女は後ろに座るもうひとりの女性に話しかけた。
「ねえ、姫!そろそろ機嫌を直してはくれないかな?」
風の音に負けぬよう大声を張るルーンフォーク。しかし「姫」と呼ばれた女性は黙ったままだ。
「ボクも少しは悪いと思ってるよ?姫を強引に遺跡へ連れ出しといて、しかもボクだけ死にかけちゃったしね」
「でも収穫はあった。これでボクの卒業も確実さ!」
努めて明るく話すも返事はない。朗らかな草原に似合わぬ気まずい時間が流れる。
「そうだ!ちょっと寄り道してかない?この北の森にはボクが生まれたジェネレーターがあるんだよ」
「ボクたち、もうすぐ卒業だろ。卒業前にボクの故郷を姫に紹介したいんだ」
またもや沈黙の時間が流れる。ルーンフォークが諦めかけたとき、後部座席から小さく「わかった」と声がした。
ルーンフォークが「そうこなくっちゃ」と呟くと、バイクはさらにスピードを上げながら針路を北に向ける。
本シナリオの5年前。とても美しい春の日だった。
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