届く想い、届かない声
御厨カイト
本文
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「また来たよ」
「今日も来てくれたんだ」
「今回もお前の好きなもんを持ってきたよ」
「わぁ、いつもありがとう。これ好きなんだよね……食べられないけど」
「ちょっと今からお前を綺麗にしてやるからな」
「前も綺麗にしてくれたからそんなに汚れてないと思うんだけどな」
「うーん、いつも綺麗にしているけど意外と汚れているもんだな」
「……もう、女の子にそんなデリカシーの無いこと言っちゃダメだと思うんだけど!」
「よっし、綺麗になった。やっぱりお前はこうじゃなくっちゃ」
「毎回毎回、ホントありがとう。おかげですっきりしたよ」
「そういえば来月から俺、高校生になるんだよ」
「あんなに馬鹿だった君でも高校生になれるんだ」
「……絶対今バカにしてんな」
「ギクッ」
「まぁいいや。それでな……不安しかないんだよ」
「どうして?」
「同じ中学校からその高校に行く奴がいなくなったから俺一人なんだよな。知っている奴がいないから結構不安」
「でも、君だったらその持ち前のコミュ力で何とかなりそうな気がするんだけど」
「俺には確かにコミュ力があるけれどそれでも、やっぱりな~……何とかなるのかな」
「そればかりは君次第だよね」
「まぁ、これは自分の力で頑張るしかないか」
「うんうん、その意気だよ!」
「ところでお前こそ平気か?寂しくないか?」
「全然平気だよ。君が来てくれるからね」
「……と言ってもお前が寂しくなくても、俺が寂しいんだがな」
「おっ、それはなんだか嬉しいな!」
「……これ、俺が普段言ってなかったから絶対喜んでいるぞ」
「よく私の気持ちわかるな。流石だね」
「ずっと今まで一緒に過ごしてきたからいなくても分かるようになっちまった」
「流石、幼馴染なのは伊達じゃないね」
「おっと……そろそろ時間が来ちゃったな……」
「えぇー、もう帰っちゃうの?寂しいよ」
「来月また来るから」
「……うん、楽しみにしているね」
「はぁー、会いたいな」
「…………私も」
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