王都の勇者と聖女

「ええい! まだ賢者の居場所は分からんのか?」


 ここは王都のシンジュクにある王城。

 玉座に座る国王が、イライラした様子で聞いてくる。


「誠に申し訳ありません。しかし、必ずや賢者様を見つけ出します」


 聖女が頭を下げた状態で答える。


 国王の前には、魔王を倒すために集められた称号を持つ者たち。

 聖女、魔法使い。

 そして、勇者。


「いっそのこと、賢者抜きではだめなのか?一刻も早く、魔王を倒して来てもらいたいのだが」


 聖女は、内心 ”この禿げ頭が!” と思っていた。

 国王の考えは分かり切っている。

 国民の国王に対する不満は日に日に高まっている。高い税金、貧しい暮らし。それなのに、国王は贅沢三昧をしている。このままではクーデターが起きかねない。


 国王は、魔王を倒すことで、魔族の土地を手に入れることで国民の目をそらしたいのだ。

 つまり、魔王討伐は正義感からではなく、保身と欲望のためであった。


「神託では賢者様が必要と出ております」

「ならば、早く賢者とやらを見つけてこい!」


 その間、勇者は聖女と魔法使いの方を凝視していた。

 ジロジロと嘗め回すような、ねっとりとした視線。


 ちらっと、勇者を見る。


 出っ張っていて広い額。くぼんだ目。突き出た顎。筋肉に覆われた上半身と短くてがに股の足。

 ゴリラ、と表現したらゴリラに失礼だ。


 その目は、聖女の胸を嘗め回すように凝視している。

 時々、魔法使いの華奢なお尻も凝視している。


 だらしなく開いた口から、つつーっとよだれが垂れた。


 聖女は思った。隙を見せれば犯られる・・・と。


 ”ひぃ・・・聖女様・・・助けてください”

 魔法使いも、泣きそうな小声で助けを求めてくる。


 実際、この勇者によって何人もの侍女やメイドや、挙句の果てには貴族の娘までもが強姦され、妊娠させられているのだ。

 国王は、そのことを知っていながら放置している。

 なんで、こんな生き物が勇者の称号を得てしまったのだろう。そう、聖女も魔法使いも思っていた。



 実は、聖女には誰にも言っていない秘密があった。賢者が必要と言う神託などは無いのだ。


 だが、この勇者と女性二人で魔王討伐の旅に出ることは想像もしたくない。

 出発の日のうちに犯されるのは明らか。

 聖女は、賢者に勇者から身を守る盾になってもらおうと考えているのだ。


「必ずや、賢者様を見つけ出します。もうしばらくお待ちください」


 舌を出して、ハァハァと息をしだした勇者。

 よく見ると、聖女と魔法使いを凝視しながら、股間をいじっている。


「それでは、失礼します!」

「わ・・・私も失礼します!」


 聖女と魔法使いは、恐怖と嫌悪感から一刻も早く勇者から離れたかった。


 心の隅っこで、賢者様が逃げ回ってくれている間は勇者から離れていられるのかしら……と思いながら。

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