第57話

「ゆ、ユートのことなんて、ユートのことなんて………。」

「本人の前では言えないけれど好きなんでしょう?」

「俺ですらわかっていたぞ。」

「村人全員知っていたわよ。」


みんな知っていたの。

私があんなにも隠していたのに知っていて黙っていたの。

恥ずかしい。

とっても恥ずかしい。


「う、う、うわあ゛ぁぁぁぁぁ~ん。」


学園長室を逃げ出したくなり出て行こうとするが何者かに抱きかかえられた。


「こらこら、好きな人を当てられたくらいで怒らないの。好きでもない人を好きって思われるよりもいいでしょう?」


ラピスおばあちゃんによって行く手を阻まれた私は顔がどんどん熱を帯びているのを感じていた。

確かに好きな人を勘違いされてくっつけようとされるのは嫌だ。

まだ好きな人がユートだと知られていてよかったとも思えるけどその分どんどん告白する勇気が失わている気がする。


「ゆ、ユートとは王都でお屋敷を建てるまで逢わない約束だもの!」

「うふふふふ、素直じゃないね。でも、異性と会う時には素直になった方が良いよ。勘違いされて付き纏われても迷惑だろうしその辺りは学園でやらない方がいいと思うわ。」

「そ、そんなの関係ないわ。私は、私は、ゆ、ユートと結ばれなくたっていいもの!」


また、私は自分に嘘をついた。

こんな自分が嫌になる。

ユートの前では自分のお婿さんにしたいから半分だけ好意を向けているのに他人に悟られるとこんなにも素直になってはいけない衝動に駆られてしまう。


ラピスおばあちゃんの言う通り私は素直になった方が良いのかもしれない。


「本題に戻るけど世界樹は精霊の源と思われてきたけど違ったのさ。」

「それは世界樹教の教えとあまりにも違いやしませんかお義母さん。」

「ルチア、ならなんで不毛の土地は出来たと思う。」

「え、それは魔王が枯らしたからではないのですか?」


世間一般では魔王と勇者の戦いが壮絶過ぎるあまり荒野となったか魔王が森を燃やした魔力が今もまだ消えていないと言われてきた。

だがそれが世界樹のせいだとすれば。


「勇者は好きな人に告白する勇気を無駄にしないための努力をする職業適性、断られる確率の方が高い人間に恋した勇者ほど強大な敵を相手にするというのが最近知られた見解ね。」

「そして世界樹の行ったこと、それは不毛の土地全体に根を張っていたこと。」

「あの絵画の森の部分でさえ世界樹の一部、世界樹が生えた場所には他の植物は一切育たない。」

「不毛の土地は世界樹によって作り変えられた世界樹の楽園だった場所で世界樹の正体は全く別の世界から来た外来種というのが里を追放された古代エルフの一部がたたき出した結論。」

「その追放された一族がうちらだってことね。」

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