第4話 気付いたら

私はある日、気付いたら自分の中学に居た。


桜が舞い散る中で、入学式の準備をしている先生達を見かけた。


どうやら私服姿の私には気付いていなかったみたいだ。


そしてそこら辺を歩いていると、会話が聞こえる。


「桜が舞ってて、入学式日和だねえ」


「ですねえ」


暖かい陽気に気を絆された先生がそう言った。


愉快そうで何よりである。


そんな会話を聞いている中で、1人の教師の視線がこちらへ集中する。


私を見上げた後、何事も無かったかの様に、準備を進めている。


私はその教師を見て思い出した。


社会科の鈴木先生だ。


鈴木先生という人物は、まだ27歳という若い教師で、剣道四段を持っている先生である。


私と仲が良かった先生だ。


そうして教師達が準備を終わらせると、新入生が入ってくる。


初々しい姿を見る度自分を思い出す。


着慣れない制服に身を包んだ自分。


慣れないクラスメイト。


自分にもこんな時があった。


そう考えるだけで私の目には涙が浮かんでいた。


悲しいのか嬉しいのか懐かしいのか分からない感情だった。

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