第3話 淡く舞う


今日はフラワーアレンジメントの教室日。

週2回でスケジュールで1回、6人の生徒。生徒は時間を持て余している近所の主婦が多い。由紀は教室がある日の午前中、近所の花屋で教室で使用する花を注文をしている。花屋の名前は「パルミエ」店主は杉本敏夫(60)、息子の孝之(26)が店を経営をしている。

由紀にとって欠かせない店でもあり、孝之とは高校が先輩後輩の中である。

朝食を食べている母娘。

「あんた、今日パルミエに行くんだよねえ」

「ああ、今日は教室があるからね」

「ついでにさ、敏夫さんにうちの庭を見てくれないか、頼んでみて」

「先週の大雨で崩れたところね。分かったわ」

「さて、私は仕事、仕事」と言いながら食器を台所に片付ける

「あと、私が洗うからいいよ」

「いつもすまないね。それじゃ、行ってくるね」亜希出ていく。その姿を見ながら「行ってらっしゃい」と由紀は答える



「こんにちは」由紀は「パルミエ」の店先で声をかける。奥からパルミエのエプロンした店主の敏夫がやってくる。

「ああ、由紀ちゃん、いらしゃいませ。注文の品、届いているよ」

「ありがとうございます」由紀、店を見渡しながら

「孝之さんは?」

「あいつ、配達に行ったよ。今後、この店を継いでもらう事になるから、配達先に顔を覚えさえようとしてるんだ」

「孝之さんがこの店を・・・。あ、杉本さん、お願いがあるんだけど、家の庭を見て貰いたいんですけど」

「あ、この前の大雨で崩れたんだね」

「そうなんです。母が杉本さんにどうしてもって」

「しょうがねえな、亜希ちゃんのお願いじゃ、断れないな」

「すみません」

「それじゃ、孝之に行かせるよ。あいつの方がガーディニング得意だから」

「孝之さんが?」

「あれでもガーディニングは勉強して資格取ったからね。はい、これは注文の花」と杉本は由紀に渡す。

「ありがとうございます」

「これからは花だけ売ってるだけではやっていけない。孝之にガーディニング担当にして、店を続けさせないとね」



忙しい昼時を少し回った時間。弁当は8割売れている。近くに公共事業の工事ができ、そこで働いている人達が買いに来ている。幕井はその話を聞いた時、弁当の数を増やすことを考えていた。工事が始また時は売れ切れになったので、もう少し増やした。その時にバイト募集したのが今の二人の主婦。小太りの主婦太田、もう一人は鈴木。「太田さん、今日も売れましたね」「雨降りそうだけど、何とか持ちこたえてくれて、助かったわ」

幕井レジから、顔を出し「もう上がってください。もし、よかったら弁当持って行ってください

「はーい、分かりました」二人、奥に入って弁当を選んでいる。

そこに一人客が入ってきた「野菜炒め弁当ください」

奥で幕井は返事をして店に出てくる。

「あ、亜希さん」

「こんにちは、幕井さん。野菜炒め弁当お願いします」

「はい、分かりました。少々お待ちください」

幕井弁当を手提げ袋に入れる。

「600円になります。この前の花見はいい天気でしたね」

「ええ、そうでしたね」亜希は返事しながら、1000円を出し、弁当とお釣りをもらう。

「ありがとうございます。今日は仕事終わりですか?」

「ええ、今日は午前中で終わりです。今日はフラワーアレンジメントの教室があるので」

「ああ、そうですね。亜希さんも大変ですね」

「由紀一人では、大変なのでちょっと手伝っています。それでは失礼します」

「ありがとうございます」

幕井、店の奥に入り、調理台で仕込みをする。

仕込みしながら、幕井は5年前の事を思い出していた。



6人の主婦が小さいバスケットケースと自分で選んだ花が置いてあり、思い思い花を活けている。由紀は個々に指導している。「多治見さん、最初はメインの花を

決めましょう」

亜希は活けた後の鑑賞会の紅茶を仕度をしている。そこにチャイムが鳴る。亜希、玄関に向かう。

バスケットケースに花が飾られていく。「天野さん、いいじゃないですか!出窓の所に置くと部屋が華やかになりますね」由紀それぞれの感想を生徒に伝えている。

亜希が戻って、紅茶の用意を続ける。庭に孝之が来て崩れた花壇を直している。

「それでは、今日はここまで。この後はお茶を飲みながら、鑑賞会をしましょう」

生徒達はそれぞれ片付け始める。由紀は亜希の用意する紅茶の手伝う。

「今、孝之さんに庭を直して貰ってるわ」

「ええ、パルミエはガーディニングもやるみたいよ」

「そうなの?」

「叔父さんが言ってたわ」

「店は杉本さんが、ガーディニングは孝之さんに任せるのか」

庭の孝之がこっちを見て、手を振っている。由紀が軽く会釈した。

各テーブルに自分の活けた花と紅茶置いてあり、お互いのアレンジを鑑賞している。

由紀、各生徒さんのアレンジを感想を伝えている。生徒たちは頷きながら聞いている。亜希は孝之の手伝いで庭に出ている。

「孝之さん、ご苦労様です」

「いらない物は捨てましょう」

「紅茶でもどうですか?フラワーアレンジメントの人達と一緒に」

「じゃあ、お言葉に甘えて。あ、そうそう、この際、庭は新しく変えませんか?」

「ちょっと、考えてみますわ」

「僕、いいアイデアがあるんです」



幕井の弁当屋。幕井は昼の売り上げの計算をしながら、残った弁当を食べるいる。

残った弁当は3個。あの公共工事のおかげで今日は売れたが、工事が雨が降ると

仕込みの個数が変わってくる。今週は何とかは雨が降りなさそうだ。数か月の売り上げは店が始まって以来の高い水準を保っている。弁当を食べ終わり、売り上げノート、電卓と伝票をクリアケースにしまう。



亜希、孝之の前に紅茶を置く。空いている席がなく由紀の隣の席になる。

一人の生徒が「あら、こう見たら、まるで新婚のカップルさんねえ」とみんなで笑う。由紀はそんな事を言われるとは、思わなかったのでびっくりしているが、孝之は照れ笑いしている。由紀、怒りながら、

「杉本さん、なに照れ笑いしているの。私たちは高校の先輩後輩なんですから」

「あ、ごめん、ごめん」

別の生徒が孝之に質問をする「プルミエさんは、ガーディニングもするんですか?」

「ええ、花屋だけではこれから大変なんで、去年、僕が資格と取りましてアドバイザーとして、やっていきたいと思っています」

「そうなんですか。お父さんと二人でお店を経営をやられるんですね」

「まあ、そのような事を考えています」

「そうなると、あとはお嫁さんだけですね」と孝之をからかう。また、笑い声が起こる。照れる孝之。呆れて見てる由紀。                          

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夕食を食べいている由紀と亜希。父が死んで10年が経って、今年が10回忌が来月に迫っている。由紀、食べながら、

「来月、お父さんの10回忌ね」

「そうね、そろそろ準備しなくちゃね。ところで、あんたどうするの?」

「どうするのって。なにが?」

「結婚よ。今日、お昼に幕井さんの弁当買いに行ったの」

「そう、花見いらい会っていないわ」

「あなた、幕井さんと結婚するって言ってたじゃないの。忘れたの?」

「覚えているけど・・・」

「孝之さんはどう?仕事は順調みたいだし、あなたの教室と繋がるし」

「お母さん、いくら教室と繋がるといって、結婚とは関係ないわよ」

「それじゃ、幕井さんとはどうするの?あれからもう5年よ。あの人も50歳になるのよ。子供の事考えたら、そろそろ考えないと」

「お母さんが結婚するわけじゃないから、いいじゃない」

「10周忌までには考えておいてね」

「え、期限をつけるの?」

「そうしないと何時までたっても、決まらないから」

「なんなのもう・・・」



店の売上金を数えて、今日の売り上げノートにつける。売上金を専用の財布に入れ

、ノート、伝票を入れたケースをカバンに入れる。店の電気を消し、外に出てシャッターを閉める。幕井、一息つき、歩きだす。



翌日

孝之が由紀の家に来て庭のガーディニングの説明をしている。孝之のガーディニングのアイデアの取り入れて新しい庭を作る事になった。

由紀は次の教室の花を考えながら聞いている。

早速、孝之を庭で仕事をし始める。孝之の仕事を部屋から見ている由紀。

「お母さん、折角、お父さんが気に入ってた庭を変えちゃうの?」

「私も前の庭は気に入ってたんだけど、孝之さんのアイデアがよくて、それに10周忌に新しい庭にもしていいかなと思ったの」

由紀は孝之の仕事姿を見ながら

「そうね。新しい庭もいいかもね」

孝之、立ち上がり、振り向いて手を振る。びっくりした由紀は思わす手を振るが、すぐに引っ込める。孝之はまた作業に開始した。由紀、引っ込めた手を見つめる。

「由紀、どうかしたの?」

「うんん、別に。さて、来週のアレンジメントを考えないと」

「孝之さん、ガーディニング資格を取るなんて思わなかったわ」

「花だけ売ってるだけじゃ、お店をやってけないと叔父さんは言ってたわ」

「杉本さん、孝之さんを口説いて取らせたかもね。買い物行ってくる」

「はーい」

由紀、仕事している孝之を見て、そして、また手を見て、軽く握る。





以上、3話はここまで。

これ以降、なると長くなりそうなので止めます(笑)

次のバトンタッチは、いろいろ考えましたが、ベテランの鈍次さんにお願いします。

何度も読み返しましたが、誤字脱字ありましたら、教えてください。

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