第三章:竜騎士遊歴編

第11話 大会前に巨大戦

 「ま、槍試合もだけどDSの事件もヒーローとして決着を付けよう」

 「うん、これは私達がヒーローとして受けた仕事だしね♪」

 竜也とジークリンデは、有志を募り異世界へと来ていた。

 「学君と一緒に戦える、幸せ♪」

 「マルタ、あまり突っ込みすぎるなよ?」

 学とマルタは腕を絡めてくっついていた。

 「嘘だろ? あの風紀の鬼がデレてる!」

 夢田希が、信じられない物を見る目で学とマルタを見ていた。

 「……あの? 竜騎士ミュージアムの年間パスは絶対下さいね?」

 黑い平安時代の甲冑、大鎧に身を包んだ美少女。

 魔法武者セイバーメイに変身した、安藤メイがジークリンデに尋ねた。

 「大丈夫、アーサーさんにお金払ったから!」

 

 学生ヒーローチームは、木々が生い茂る森の中を進む。

 「見つけたぜ、あれが敵の狙いの木だ! 皆、変身の用意を!」

 竜也の言葉に従った皆が変身した。

 辿り着いた場所は、巨大な一本の大樹を中心に開けたフィールド。

 幻想的と言えば聞こえが良いが、ダークファンタジーの環境だった。

 

 ヒーロー達が、大樹の調査を行おうとした時、空に異変が起こる。

 空に黒い穴が開いて何者かが現れた。

 大樹の上に現れたのは、黒いフード付きのローブを着た少年と女と男の三人組。

 彼らがDSを売りさばいていたマモーンの使徒。

 「あ~あ、嗅ぎつけられちゃった♪」

 青白い肌に金髪の生意気そうな少年。

 「仕方ないですね、排除しましょう」

 同じく青白い肌に黒髪の知的な顔の美女

 「マモーン様の復活の贄となれ!」

 そして最後は筋骨隆々な巨漢。


 「出たな、マモーンの使徒! 俺達が相手だ!」

 敵と対峙した白陽が吠える。

 だが、ここで突然大樹から伸びた蔦がマモーンの使徒達を捕えた。

 「何っ! マモーン様の大樹が何故我らを!」

 「嘘だろ、俺達を離せ!」

 「どういうことなのですかマモーン様!」

 三者三様に状況が飲み込めていない使徒達。


 「え、あれは何が起きてる!」

 状況が飲み込めてないのは竜也達ヒーロー側もだった。

 「もしや、あの木がマモーンの使徒達を取り込もうとしているのでは?」

 セイバーメイの言う通り、使徒を取り込んだ大樹は緑色の巨人に姿を変え出した。

 「やばい、皆さがれ!」

 フリーデンの叫びにチームの皆が飛び退いた。


 そして、巨大な緑の魔人は変化を終えて喋り出す。

 「我が名はキングマモーン、強欲の王である」

 首元に使徒達の苦悶の顔をネックレスのようにポップさせたキングマモーン。

 「欲張りすぎは身を亡ぼすよ♪ 巨大戦だ!」

 希が全身を輝かせ、ヘリオスマンへと変身する。

 「大鎧さん、大きくなって下さい!」

 セイバーメイの叫びに応え、彼女の纏う鎧が巨大化し巨大武者へと変形した。

 「ダイセイバーメイ、見参です♪」

 太刀を大上段に構えて可愛くポーズを取るのは腐っても、魔法少女だからか?

 「リンちゃん、俺達も行こう」

 「おっけ~♪」

 竜也達もジークフリーデンへと巨大化した。

 「ジークフリートが末裔、大竜騎士ジークフリーデンッ!」

 騎士として名乗りを上げるジークフリーデン。

 ジークリンデのファフナー家が、ベオウルフと並ぶ北欧の竜騎士ジークフリートの子孫であるから間違いではない。

 ちなみに、ダイセイバーメイとなった安藤メイも竜騎士藤原秀郷の末裔だがこちらは秀郷一代限りなので系譜にはない。

 

 「白陽、家のロボットに乗ってみる?」

 「ああ、相乗りさせてもらうぜ」

 サンマルタの言葉に白陽が応じる。

 「ありがと♪ ハザードラダー、サモン!」

 サンマルタが携帯電話に似たガジェットのパネルを操作する。

 『座標確認、ゲートオープン』

 と、女性人格のボイスが流れると同時にサンマルタと白陽の背後の空間が歪み

通常よりもサイズが大きい消防車が現れた。

 巨大消防車、ハザードラダーから放たれた牽引ビームでサンマルタ達は搭乗する。

 『パートナー設定開始、白陽こと岸野学様♪ お嬢様をお願いいたします』

 サンマルタと同時に操縦席のシートに固定された白陽はコントロールスティックを握った途端始まった処理に驚いた。

 「え? ああ、任された!」

 「ちょっと、メイビス! 余計な事を言わない!」

 サンマルタがサポートAIに叫ぶ。

 『了解です、後は若い方達でスタンドアップをどうぞ』

 メイビスが見合いのスタッフのような事を言って変形シークエンスを開始。

 ハザードラダーが消防車形態から立ち上がるようにロボット形態へと変形した。

 「「ハザードラダー、現着っ!」」

 サンマルタと白陽が同時に叫ぶ、ヒーロー側の準備は整った。


 「忌々しいヒーロー共、覚悟しろ!」

 キングマモーンが口と両掌から紫糸の光線を放つ。

 「幻想科組、今度はちゃんとバリヤー張りしてね!」

 「わかってるよ!」

 「行きますよ!」

 先に巨大戦に入っていた面子が、ハザードラダーが来るまでバリヤーを張る。

 ジークフリーデン、ダイセイバーメイ、ヘリオスマンが黒、青、黄色とバリヤーを展開しキングマモーンの光線を受け止める。

 だが、ヘリオスマンとダイセイバーメイが耐え切れずバリヤーを割られて弾き飛ばされた。

 「ラダーキャッチ♪ 待たせたな、皆!」

 「お待たせ! 私達も加わるわ!」

 白陽とサンマルタが二人で行きを合わせて、ハザードラダーを操作しヘリオスマン達を受け止めて下ろす。

 「助かった、ありがとう♪」

 「ありがとうございます、汚名返上っ!」

 ヘリオスマンは跳躍からの足を青く光らせてからのキック。

 ダイセイバーメイは太刀を構えて突進。

 キングマモーンを一人で抑えていたジークフリーデンは、仲間の動きに気付いて飛び退いた。

 キックと斬撃がキングマモーンを襲う。

 「決まった♪」

 「やりました♪」

 自分達の攻撃が効いたと信じた二人は、言ってはいけない台詞を言ってしまう。

 「馬鹿、後ろだ!」

 ジークフリーデンが叫ぶと同時に、キングマモーンが起き上がった。

 「馬鹿め、そう簡単んにやられぬわ!」

 背後ががら空きなヘリオスマン達を狙い、両腕を構えるキングマモーン。

 「二人をやらせない、行きましょう!」

 「ああ、ブリザードインパルスッ!」

 ハザードラダーの胸部が開口し、契約して内蔵された氷の妖精の力も借りた魔力を帯びた冷凍光線をキングマモーンへと発射する。

 「ギャ~~!」

 ただの冷凍光線を避けるまでもないと侮っていたキングマモーンは、自分にも通じる痛みと冷たさに叫び凍り付いた。

 「馬鹿だ、凍ってやがる♪」

 「人間を舐めてるからよ♪」

 ジークフリーデンの中で竜也達は笑い、自分達も攻撃に行く。

 「ホルンブリッツェンッ!」

 ジークフリーデンの頭部の角から、黒い電撃が放出されて氷漬けのキングマモーンに直撃しその巨体を粉砕した。

 この攻撃の間に戻って来たヘリオスマン達が叫ぶ。

 「まだだよ!」

 「まだです!」

 二人が叫ぶと同時に、粉々になったキングマモーンの肉片が集まり復活した。

 「がッはッは、無駄だヒーロー共っ♪」

 豪快に笑うキングマモーン。

 「馬鹿ですね、貴方が復活できるのはあと一回です♪」

 ダイセイバーメイが推測を叫ぶ。

 「そうだね、取り込んだ使徒の首が後一つだし♪」

 ヘリオスマンも指摘する。

 「ぐっ! だが、我は負けんぞ~~っ!」

 千手観音のように背中から触手を生やし、ヒーロー達を倒すべく襲い掛かるキングマモーン。

 「そんな気持ち悪いの喰らわないよ!」

 ヘリオスマンは手から光線を剣状に放出する。

 「乙女に破廉恥は許せません!」

 ダイセイバーメイは太刀を構える。

 「ファングシュベルトッ!」

 ジークフリーデンも愛刀を構えた。

 「そっちが触手なら!」

 「こっちは梯子と鋸よ、ラダーソーッ!」

 ハザードラダーは手の甲から回転鋸を出してラダーアームを伸ばす。


 キングマモーンの忌まわしい触手攻撃は、ヒーロー達がそれぞれの剣技や切断技で

無効化した。

 「馬鹿な、我の力が通用しないだと!」

 ヒーロー達の対応力に驚くキングマモーン、自身も悪の怪人としてはそれなりに強いと自負していたプライドが揺らぐ。

 「あなた、過去に竜騎士さんに負けてますよね♪」

 ダイセイバーメイが、キングマモーンの心を抉ると同時にその使徒の首だけを何処からか出した光の矢で射抜く。

 「メイちゃん、大当たり~♪ これでもう復活できないよ♪」

 ヘリオスマンがはしゃぐ。

 「お前の誤算は、今時のヒーローは学校できちんと悪党の勉強してるんだよ!」

 ジークフリーデンが叫ぶ。

 「キングマモーン、貴方はすでに攻略済みの過去問です!」

 ハザードラダーからサンマルタが叫ぶ。

 「それじゃあ皆で、一斉に問題を解くとしますか♪」

 白陽が皆で止めを刺そうと言う。

 そして、心が折れたキングマモーンに対してヒーロー達が一斉に必殺技を放って止めを刺したのであった。


 後日、竜騎士ミュージアムのカフェで竜也達は打ち上げを行っていた。

 「結局、報酬は一人二万円だったね」

 ドラゴンパフェを食べながら希がぼやく。

 「まさか、私達が倒したのが分体だったなんて」

 パンケーキを頼んだマルタが溜息をつく。

 「結局、俺達はキングマモーンの怨念に振り回されてたのか」

 「この間のは、奴の信奉者が生み出したって事?」

 竜也とジークリンデがピザを分け合いながら語る。

 「まあ、何はともあれ事件は解決だな♪」

 学が笑ってまとめに入る。

 「は~♪ これが年間パス、学校抜け出して通います♪」

 メイは手に入れたミュージアムの年間パスを見て喜んでいた。

 

 竜也達が相手にしたキングマモーンは、調査の結果本体ではなく過去に倒された奴の肉片を手に入れていた信奉者が作り出した物と判明した。

 だが、DS事件はこれで完全に終わったかと言うとそうではなく。

 マモーンの使徒達がばら撒いた上に、怪人から株分け的に繁殖したDSはまだまだ

なくなったわけではなくDSの力を得たヒーローや怪人はまた事件を起こすだろうと言う結論が出た。

 「まあ、DSに関しては他の悪の怪人とかと同じで悪さしたら倒せば良いさ♪」

 「そうね♪ ひとまず一件落着~♪」

 竜也とジークリンデは、後の事は後の事と思い仲間達と悪に対峙する青春を楽しもうと決めたのであった。


 かくして、竜也達は本人なりに関わったDS事件に決着を付けたので気分を槍試合へと向ける事が出来たのであった。

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