第14話 折れた……。

 宿屋がないから、人が騒ぐから。

 人は裏切るから、食い物にするから。

 まぁ、籠る理由等いくらでもある。


 だけど……それは……兄ちゃん引きずりすぎたよ。


「さて、話は終わったな?カイトお前ここから出てくれ。レツ、レオ少しの間鞄に入れ。また直ぐに出し手やらるから、言うこと聞けよ?」

「がぅぅ……」


 鞄のの口を広げるとスゴスゴと二匹が鞄に入って行った。

 結局ジュリの言うことは絶対の二匹だ。

 後残ったのは聞き分けが悪い餓鬼一人。


「兄ちゃん…それはないよ。俺は、兄ちゃん探して」

「なに言ってんだよ、パーティー組んで遊んでたんだろ?だったら探してなんてないだろ?それになぁ、ここはリリデアからそう離れてないぞ。探してるならもっと、離れた場所でカイトと会っても良かったんじゃねぇの?」

「それは……あいつらがしつこくて。最初は断ってたんだよ。でも……」

「お前…強くなれよ!いつまでそんなに、弱いままなんだ?」

「弱いって……俺はもう16になったし…」


 身体ばっかり大きくなりやがって……まったく。

 まぁ、普通の16才ってこんなもんか……これはまた人に騙されかねねぇなぁ……。

 本当に…こいつと出会ってから心配しっぱなしだよ。だからお前の存在を消したのに…。 

 また、ここからこいつと一緒にかぁ~。


「ほら!一度テントから出ろよ?ダンジョン潜るんだろ?」

「え………ぇぇ?」

「お前、煩いよ!ここはダンジョンだぞ。騒ぐなら直ぐに出口迄送るが?」

「い、嫌だよ。俺は兄ちゃんと、一緒が良いんだ!」

「……お前それは、16の餓鬼が言う台詞じゃ無いぞ?そりゃ成人前の餓鬼が言う台詞だ」

「え?だって、俺はそう思ってるんだけど?」


 ああ、フェルトさん!こいつを素直に育て過ぎたよ……。なにこのピュアな子供は?


 俺といた頃より素直為ってないか?

 先が思いやれるよなぁ…。

 全然ひねてねぇよこいつ。

 俺の方が拗ねてて餓鬼じゃねぇかよ。


 二人でテントから出ると、直ぐにレツ達を鞄から出してやるとまた二匹にのしかかられた。

 マジやめろ重い!

 ある程度二匹の気がすめば、身体中がヨダレでベトベトだ。


「まったくお前ら……汚れたまったじゃねぇかよ!【クリーン】ふぅ、綺麗になったか?」

「……兄ちゃん…相変わらずなんだね?」

「なにが?ほら!どけ、テント仕舞うから」

「う、うん」


 そして、テントをアイテムボックスの中に仕舞うとカイトに話掛ける。

 ダンジョン情報は聞いとかないとな。


「カイト?」

「な、なに?」

「このダンジョンの情報は、しっかり頭に入ってるのか?」

「えっと……それは…ない……」

「は?」

「だから、あいつらに無理やり引きずられて来てるから。情報なんて、俺は持ってないよ」

「……知らないでここ迄来たのか?そんな軽装で?食糧も薬も持たずに?」

「う、うん。俺達は元々貧乏パーティーだったし。ランクも、俺はBだけどあいつらはDランクで。……はぐれた奴らが食糧とか持ってた筈だし…」

「お前……完全にあいつらに、『かも』られてるじゃねえかよ!人の悪意は見抜けよ!冒険者に為ったんなら……」


 まったく、ギルマスどんな教育をこいつにしたんだ!

 剣の講師は……確か……バルドさんだったか?

 心得を教えるのは良いが…悪意も教えろよ!


 世間知らずのお坊ちゃんに育てて、厄介な事に為ってるぞこいつ。


「はぁ、そう。それで?お前魔法は?」

「えっと、水魔法、土魔法の中級位の魔法迄ならなんとか為ったけど……。後はそこそこしか?へへへ」


 中級……ロックアロー?とかウォーターカッター、あれは初級か?

 なら……なんだったか?

 ってか、レベルはどんだけ上がったのかな?君は……。


 あ~もう!何処の世界にこんな弱そうなBランクの冒険者がいるんだよ……。

【かも】ってくださいねっ♡って言ってるようなもんじゃねぇかよ!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る