38話 復讐心

・10月5日・ 朝  ……ゾル王国、城、訓練場……


「なんで、お前たちが!?」


「ははっ困惑しているようだな!」


 セレーテが笑いながら空を飛んで、それと同等のスピードでマリン、その後ろからソニアが走ってくる。


「あぁすまない。サプライズがしたいって聞かなくてな……改めて紹介しよう! アドロとメリッサだ。2人共、少し前にサンリスタ王国で誘拐され魔族になったらしい。その時に家族も殺されたらしく今は2人ぼっちだ!! どうしたいか聞いたら、君たちの手伝いをしたいとのことだ!! よろしくな!」


「え……」


 人間の記憶が戻ったとはいえ、この前まで敵対してた関係。

 味方とは言いにくいと思ってたけど……


「私から頼んだのよ……簡単に言うと復讐したいんです。魔族は私たちの家族を奪い、あまつさえ私たちを魔族にした。許せない。絶対に」


 アドロとメリッサは思い出しているのか、手がプルプルと震えている。

 余程の怒りが目に見て見える。



「……亀兄さんたちは魔王を倒す旅に出てるのよね? 私たちにも元凶である魔王を殺したい。目的が一致しているってわけよ」


 亀兄さん……?


「だから……これからよろしくね、亀兄さん!」

「よ、よろしくお願いします!!」


 急なことだったが、この2人の様子を見て、本気だと言うのが分かった。

 本気で復讐をしようとしている。

 俺には復讐がいいものだとは思わない。

 だが彼女たちは全てを失った。

 何もかも失って、残ったのが互いと復讐心……俺では彼女らの強い気持ちを止められない。セレーテ様でもだ。


 だが俺らといることでちょっとでも何かが変わるならその方がいいと思ってる。

 賑やかだしな。


「よろしく」

「よろしくお願いします!」

「よろしくお願いします」

「よろしくね」


 俺は2人と握手をし、ラルバ王子とマリン、そしてソニアもそれに続いて声をかけた。


「とりあえずここで1ヶ月滞在するのはいい判断だと思うわ。……このままだとラルバ王子、魔族にやられちゃうし、ま、私たちも手伝うからさ、気にしないでよ」


「は、はい……」


(……相手は一応王族だぞ?)


 こうして、2人仲間が加わった。

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