第24話 旅立ちは再開と共に7

「1年A組出席番号16番のサンドラ・ユーロプスよ。サンドラって呼びなさい。趣味は正義、特技も正義ね。私が来たからにはこのクラスでの悪事は断固として許さないわ。覚悟なさい。」


一瞬クラスがどよめいた。


つまりこいつは正義という独断でこのクラスを支配するということを言ったからだ。


そう宣ったのは誰か。


そいつは先ほどあった痴漢事件で少女を助けた、力で正義を具現した、サンドラと名乗った少女である。


しかし当の本人はそのどよめきを称賛のどよめきだと受け取ったようで堂々としていた。


担任も驚き4割呆れ6割といった感じで次の人へ促した。


俺は小さな声でサンドラを咎めた。


咎めた、と言っても俺たちはそこまで親しいわけではないし、何せ会ってまだ何時間かだから興味本位半分、友達作りという目的半分の当たり障りのないものだったが。


「おいおい、なんてこと言ってんだ。お前、半ば独裁宣言をしたようなもんだぞ。」


俺は慣れていなかったがからかうようにそう言った。


コミュニケーション能力のあるやつはこういうことが起こったら大体そういう風に聞くんだろう?


「独裁?そんなことはしないわ。だってみんなは迷える子羊だもん。あくまで私はそいつらを導いてやるだけだわ。それにクラスのみんなは同意してくれたじゃない。」


「いや、お前なぁ……」


今の彼女には何を言っても無駄そうだった。


というよりも今の俺ではそれ以上会話を広げられなかった。











まあなんだかんだあったがとりあえず終わった自己紹介。




その後各自で帰路についていた。




かくいう俺もその一人で、蘭と別れた後、一人で男児寮へと向かっていた。




そんな時、俺を呼び止めたものがいた。


「シンさん」


振り向くとそこには茶髪で、すかした顔の男がいた。


こいつは確か俺のクラスの自己紹介でエリック・オービンスと名乗ったやつだ。


「やぁ、エリック君、何の用かな。」


すると彼は少し驚いたような顔をした。


「あれ?あなたならもう僕の正体に気づいていると思っていたんですがね。」


俺はけげんな顔をした。


正体?いやいや、こいつの正体はエリック・オービンスその人だろう?


「ん?エリック・オービンス君、だよね?」


「それもそうですが…もしや、自分がこの世界に来た理由をお忘れですか?」


「ん?自分がこの世界に来た理由?それは…」


そこで俺は思い出した。


俺は確かサンドラっていう勇者の統御をするためにここに生まれたのだった。




そういえばサンドラという名前のものがもう近くにいたな。




そうか、あいつが勇者だったのか。




しかし、これをエリックが知っているとはどういうことなんだ?




まさか俺と同じくあの女から命令を受けてここに来たとか?




まあ確かにあの女は別に俺一人が送り込まれるとは言っていなかった。




「…とりあえず話をしよう。お前もこちら側の人間なのか?」


「話が早くて助かります。」











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