第20話 旅立ちは再開と共に3
馬車がユクドニアに着いた。
ユクドニアとは戦乱から遠く離れたところにある地で、ユクドニア国立北コルロ高校、俺たちがこれからはいる高校があるところだ。
日は暮れてしまっているので、とりあえずとってある寮で寝ることにした。
蘭は女子寮を取ってあるらしいから、ここでいったんさよならだ。
「じゃ、明日また。」
「…お休み」
そう言って俺たちは別れた。
小鳥は小枝の上でさえずり、太陽は夜にはその無機的特徴を遺憾なく発揮しただの廃墟のように思われた人工物に魂を吹き込み、町を活気づけるのだった。
陽気な太陽によって道はだんだんと活気が付き始め、その喧騒はあくまでも陽気に、まだ眠っている者たちの目を覚まさせる。
俺もそんな喧噪で目を覚ました一人である。
時計を見るとまだ時間には余裕があるらしい。
入学式のあいさつの練習をしてもいいのだが、せっかく新たな街に来たので少し外を出歩くことにした。
俺が出るころにはもう外は十分に活気づいており、あたりはおよそ人間の出す声量とは思えないほどの声が飛び交っていた。
屋台にあるものは新鮮な野菜から得体の知れないものまで多岐に渡り、俺の起き掛けの眼には十分すぎるほどの彩度で辺りを埋め尽くしていた。
しばらく歩いていると熱心に得体の知れないものを見る蘭の姿があった。
「よう、蘭、おはよう」
「…おはよう。」
「さっきから何に見入っているんだ?」
「…グレンモジャリアリーフ」
「グ、グレンモジャリアリーフ?なんだ?それ。」
「…グレンモジャリアリーフは多角的なアブルデンの統合体及び精神干渉型リバイドの進化形態。」
「アブ?リバ?まあよく分らんがすごいものなんだな。」
「…すごいなんてものじゃない。これがこんなところに売られていること自体異例。」
「あ、ああ、そうか。ところで今日は入学式だな。もう準備は済んでいるのか?」
すると蘭ははっとしたような顔をして
「…急用を思い出した。」
と言ってトテトテ帰っていった。
俺はそのあとも色々見て回ることにした。
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